「メシウマ」の感情をあえて隠すのは不自然だ 他人の不幸は蜜の味、自分の不幸も笑われろ

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「他人の不幸は蜜の味」だ(写真:laflor/iStock)
松下幸之助氏(パナソニック創業者)のもとで23年側近として過ごした江口克彦氏。若手ビジネスパーソン向けの連載として好評だった上司と部下の「常識・非常識」に続いて、「50歳からの同調圧力に負けない人生の送り方」について書き下ろしてもらう。

おおよそ、他人の失敗や不幸ほど楽しいものはない。「他人の不幸は蜜の味」というが、まったくそのとおりである。

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このように言われるのは、日本だけではない。ドイツ語では、シャーデンフロイデ(陰の喜び)という。「他人の不幸を喜ぶ気持ち」という意味だというから、洋の東西を問わず、人は誰でもそのような感情を持っているということだろう。インターネットの匿名掲示板などでは、「メシウマ(他人の不幸で今日も飯がうまい)」というそうだ。

この「メシウマ」という言葉、どのような若者たちが言い出したのかは知る由もないが、それこそ「うまい」言葉だと思う。「蜜の味」だとか、「陰の喜び」というと直截的、かつ陰湿な感じがする。その点、「メシウマ」は秀逸だ。とにかく、人は、他人の不幸を喜ぶものだ。他人の失敗をほくそ笑むものだ。

親友の孫が受験に失敗すると嬉しい

この「メシウマ」な他人の不幸、これは何歳になっても変わらない。たとえば次のようなものだ。部長の息子が受験に失敗した。これまで同期の出世頭だった友人が昇進試験に不合格になった。会社を辞めて大々的に立ち上げた事業に失敗した。多くの報酬を得てため込んでいた資産をだまし取られてしまった、など。出世した人、社会的な成功者が失敗した場合、特に「メシウマ」になる。

もちろん、こういう話を聞いて、いきなり笑うような人はいない。道徳的な行いが身に付いている人は、ここで「残念ですね」「お気の毒に」と声をかけて悲しい顔をするようになっている。これが同調圧力である。

しかし、本心はまったく違う。おもしろい話だと思っている。誰かに話したくて仕方がない。そして密かに至福のひとときを味わい過ごすものだ。まさに「他人の不幸は蜜の味」である。

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