このごろ、会社において、また「さん付け」がいいというような風潮が出てきたように思います。大抵の場合、経営がうまくいかなくなると、「うまくいかないのは、社内の風通しが悪いからだ」「部下が上司に、自由にものが言えないからだ」などという理由で、「じゃあ、さん付けにしよう」となるようです。
しかし、筆者の34年におよぶ経営者としての経験から言えば、肩書で呼ぶのではなく、「さん付け」で呼び合う会社は、大抵その後、倒産するか、衰退するか、あるいはそれ以上の発展はしないということです。
もちろん、「さん付け」は、家族で経営している、あるいは、5、6人で経営をしている零細企業では当たり前と言ってもいいでしょう。いわゆる「パパママ会社」ですから、むしろ肩書で呼び合わないほうがいいかもしれません。
自らの首を絞めるようなもの
しかし、10人、20人を超えて、中小企業、まして大企業において「さん付け」をすれば、自らの首を絞めるのと同じだと思います。もちろん、大企業の飲料メーカーのS社などのように、役員以外は「さん付け」のところもありますが、「役員以外」ということは、部分的には「さん付け」は行われていないということ。そのS社が「さん付け」をしているのは、「降格」を前提にしているからですが、それが業界トップになれない要因のひとつではないかとも私は思っています。
ついに台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に身売りしてしまいましたが、シャープが、経営が行き詰まったとき、「やはり社内の風通しが悪いのは、肩書で呼び合うからだ」と2013年に「さん付け運動」始めました。しかし、シャープはどうなったでしょうか。ここに改めて書き記す必要はないでしょう。
では、なぜ「さん付け」が、会社の崩壊につながるのか。
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