「安倍政治」継続か否か、衆院選の勝敗ライン 自民が「過半数」「半数割れ」ならどうなる?

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そうした中、各党から「今回の衆院選は『安倍政治』の信任投票」(維新幹部)との声が相次ぐ。政界全体が、外交や内政の重要課題などではなく「安倍政治」継続の是非が最大の争点と位置づけているからだ。ただ、その視点でみると選挙のもたらす結果は「首相退陣」から「史上最長政権」まで極めて幅広い。

これまでの衆院選を振り返ってみても、今回のように「風向きが定まらない」(自民選対)場合は、永田町の格言通り「ふたを開けるまで分からない」選挙になる可能性が高い。週刊誌などが次々と掲載し始めた「全選挙区の情勢調査」でも「与党290議席超の圧勝」から「自民まさかの半数割れ」まで両極端の予測が並び立つ。

小泉純一郎首相による2005年の「郵政選挙」以来、2009年の「政権交代選挙」、2012年の「政権再交代選挙」、そして前回2014年の「アベノミクス選挙」までは、すべて自民、野党のいずれかに強い追い風が吹く選挙戦だった。事前の各メディアの選挙情勢予測も方向性は同じで、ほぼ予測通りの選挙結果となった。しかし、今回の選挙戦は最終構図が見極めにくいため、予測の段階から見方が割れている。

「絶妙の審判」なら自民40~50議席減だが

衆議院の中選挙区時代には「国民の絶妙の審判」とも評される選挙結果が少なくなかった。内閣支持率も含めた安倍政権に関する世論調査を分析すると、「国民生活安定のための強力な政権は必要だが、国民の意見を無視するような多数による暴走は困る」というのが有権者意識の最大公約数とも見える。今回は「安倍政権の継続は認めるが、独善的な政権運営はさせない」というのが絶妙な審判とすれば、自民40~50議席減という「首相にとって微妙な選挙結果」になるのが歴史の流れとの見方も出てくる。

首相は25日夕刻に「解散表明記者会見」に臨む。まず、解散の「大義名分」を説明し、選挙戦で訴える公約などをアピールするとみられる。8月3日の出直し人事後の記者会見では国民に謝罪するため「8秒間も頭を下げる」という異例の行動に出た首相が、25日の会見でどのようなパフォーマンスを繰り出すかが永田町だけでなく国民の注視の的となりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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