「安倍政治」継続か否か、衆院選の勝敗ライン 自民が「過半数」「半数割れ」ならどうなる?

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もう一つの勝敗ラインとなる「改憲勢力3分の2(310議席)」に視点を移すと、むしろハードルが下がる。小池知事は憲法改正が持論で「小池新党」も改憲勢力と位置付けられていることから、現在の与党と日本維新の会などに小池新党の獲得議席が上積みされれば、「計算上は自民党が230議席程度でも3分の2に届く可能性がある」(自民幹部)からだ。このため、「改憲勢力3分の2」は首相にとっての勝敗ラインとはなりそうもない。

自民党はこれまで毎月のように全国的な選挙情勢調査を実施してきた。通常国会閉幕後に内閣支持率が急落した時期は「今解散すれば自民は50以上の議席減」との数字が出ていたとされる。さらに選挙戦で、(1)全国的な4野党統一候補、(2)小池新党の本格参戦、を条件に加えると「自民80議席減」という危機的事態も想定されていたようだ。

ただ、8月3日の「出直し人事」やその後の北朝鮮危機への迅速な対応などで内閣支持率が持ち直し、民進党が代表選後も混乱が続いていた9月上中旬の時点での自民調査では議席減が「30~40」程度まで縮小して、首相の解散決断を後押ししたとされる。

「政権獲れない野党」の解散批判は「遠吠え」に

その一方で、野党第1党として自民党を追い詰める立場の民進党も、選挙情勢は厳しい。9月26日に旗揚げ予定の小池新党「希望の党(予定)」が小池知事を前面に立てて全国規模で選挙戦を展開した場合、新たな政権の受け皿として「40議席以上の大躍進」(選挙アナリスト)を予測する声も多く、そのあおりで民進党の議席が増えず、野党再編に向けた分裂・解党の危機に陥る事態も想定されるからだ。併せて、議席獲得だけを目的とした共産党との本格選挙共闘に踏み込めば、「政権を目指さない永遠の野党」(民進保守派)になりかねず、安倍政権以上に国民の厳しい審判が民進党を直撃する可能性も少なくない。

そもそも、今回衆院選に臨む各党の選挙態勢からみても、「与党の半数割れはあり得ない」(選挙専門家)のが実態だ。このため、「衆院選は政権選択選挙」というのは建前論で、「実際は自民党内の権力闘争の構図を決める選挙」(自民長老)と位置づけてもおかしくない。野党側が「大義名分がない」とか「首相は卑怯者」などと解散そのものを批判すること自体が、「政権交代が視野に入らない弱小野党」(同)の"遠吠え"とも見える。

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