「安倍政治」継続か否か、衆院選の勝敗ライン 自民が「過半数」「半数割れ」ならどうなる?

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今回の衆院選は前通常国会での「定数10削減」の議決により、小選挙289、比例代表76の合計465議席をめぐる競り合いとなる。与党にとっては、まずは「過半数」の233議席、次いで「安定多数」の244議席、その上の「絶対安定多数」の261議席、さらには現状の「3分の2(310議席)」が4段階の「勝利の指標」となる。

いずれも国会運営に直結する議席数で、与党がすべての常任委員会(17)で委員長を出し、各委員会の委員数も与野党同数か与党過半数となるのが「安定多数」だ。実現すれば与野党対立法案を審議する際、委員長決裁も含めた「強行可決」が可能となる。

「絶対安定多数」はすべての常任委員会で与党委員が過半数となり、国会運営で完全に主導権を握れる。さらに「3分の2」以上となれば与党だけでの憲法改正発議が可能となることに加え、参院が与党半数割れの状況でも、政府や与党の提出法案が参院で否決された場合の衆院での再可決・成立が可能となる。

こうした国会運営上の勝敗ラインとは別に、政局絡みで注目されるのが「首相にとっての勝敗ライン」だ。衆院選は政権選択選挙と位置づけらているため、首相は25日の解散表明会見でも「与党で過半数(233議席)」を勝敗ラインにするとみられる。ただ、連立与党の公明党は創価学会という強固な支持組織を背景に30議席強の獲得が確実視されているため、自民党は200議席余りでもこの目標はクリアできる。それでは自民党の解散前勢力から約90議席減ともなるだけに「自公政権は維持できても首相は退陣に追い込まれる」(自民幹部)というのが永田町の常識だ。

自民単独過半数止まりでは「党内政局」に

選挙後の政権運営も考慮すれば、「首相の勝敗ライン」のポイントは自民党単独での(1)過半数、(2)安定多数、(3)絶対安定多数、(4)解散前勢力維持かそれ以上、の4段階となる。

公明党を加えた与党の議席数は(1)でも与党の絶対安定多数を超える計算で、理論的には安倍政権が国民から信任されたことになる。首相自身も「自民単独過半数で十分」と側近にもらしたとされるが、解散前勢力(無所属の議長らも含める)からは60近くの大幅議席減となるだけに、党内的には「首相の責任論が噴出し、総裁3選への流れも変わる」(岸田派若手)ことは避けられそうもない。

これに対し(2)の「安定多数」の場合は自民の議席減は50以下となり「責任論は出ても、党内政局に直結することはない」(自民幹部)との見方が多い。さらに(3)の「絶対安定多数」なら約30議席減とはなるが、自民単独での絶対安定多数獲得だけにメデイアが選挙結果を「自民勝利」あるいは「自民圧勝」と伝えることが想定され、選挙後も首相が求心力を維持し、総裁3選への流れも強まる可能性が大きい。もちろん(4)の「解散前勢力維持」ともなれば総裁3選は既定路線化し、政権運営も"安倍1強"が復活して、首相にとって「史上最長政権」と「早期改憲実現」への道が開ける。

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