追加緩和の選択肢なき日銀を取り巻くリスク 米国のQEの縮小と、中国バブル潰しの帰趨に注目

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英エコノミスト誌が書いているように、中国の「表の銀行」は当局に厳しく監督されている。おそらく、「表の銀行」は1990年前後の日本の銀行ほどのレバレッジを効かせた無茶な融資は行っていないだろう。中国の当局は銀行の預金金利と貸出金利のスプレッドが過度に小さくならないように維持し、銀行が稼げる状態を守ってきた。

一方、1990年前後の日本の銀行は、金融自由化によって利益が稼げなくなったために、無謀な不動産融資を拡大させた。それゆえ、中国当局は今のうちに、シャドーバンキングの暴走を抑えたくて、先月のような「お仕置き」を「行儀が悪い」銀行に加えようとした。

それは方向性としては正しい政策だが、そういったバブル抑制策を当局がどこまで行えるかは、中国の今後の雇用情勢にかかってくる。失業が増加すると、成長を下押しさせ得るバブル抑制策の継続は難しくなる。また、成長率が急に落ちると、資金繰りが苦しくなる不動産関連業者が増えたり、不動産価格に対する人々のユーフォリアの剥落が急激に起きたりして、ハードランディング起きる恐れがある。

中国政府が難しいバランスをとりながら不確実性があるバブル対策を行っていけるかどうか注意してみて行く必要がある。

加藤 出 東短リサーチ社長

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かとう いずる / Izuru Kato

1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』  など著作多数

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