「ポケモンGO」で日本は「世界征服」できるか 「クールジャパン」は民間主導しかない

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第一に、前出のように、既存のゲームコンテンツメーカーが、積極的に技術や開発力にエッヂを持った海外企業と提携する、あるいはM&Aを行うことが考えられる。たとえば、異業種だが、キヤノンによるスウェーデンのネットワーク監視カメラ企業(小規模ながら、世界市場シェアナンバーワン)買収や、直近のソフトバンクによる英国アームテクノロジー(半導体設計企業)買収が、参考事例として挙げられる。

買収資金の調達に、現在のマイナス金利下での銀行借り入れを活用するのも良し、社債発行も良し、エクイティ・ファイナンスを行うのも良い手法であろう。エクイティ・ファイナンスの場合、「成長ストーリー」をうまく「エクイティ・ストーリー」に反映させ、投資家に訴えることができれば、株価は上がり、株式市場の活性化や、またその企業戦略が成功すれば、日本経済の活性化にもつながるはずだ。

第二に、潜在成長力をもつベンチャー企業を数多く創出させる土壌づくりが必要である。ナイアンティックがグーグルからスピンアウトしたベンチャー企業であるように、日本でも、情報通信産業からスピンアウトして、「イノベイティブなスマホゲーム」などをつくり出すことができる企業の出現は、今後の日本のゲーム産業にとって重要なことである。

日本は先端技術面では、米国や韓国にまだ遅れている

1990年代のクリントン=ゴア政権時の情報スーパーハイウェイ政策や同年代末の金融危機時に韓国の金大中大統領がとった情報産業育成・成長戦略策はよく知られているところだ。

たとえば、韓国は1997年に通貨危機に直面し、当時の金大中大統領は、疲弊した韓国経済を立て直す一環で、韓国版「情報ハイウェイ」政策を打ち出した。積極的に情報通信インフラ整備を進め、インターネットの普及とブロードバンドを推進したのである。

さらには、同国は、モバイルインターネットインフラ整備においても先進国だ。こういう状況のなかからNHNが起業、成長しているのは必然だ。同社は、今年7月に日米同時上場を果たしたLINEを生み出したNHNジャパンの親会社である。日本では、すべてが中途半端に終わり、こうした米国や韓国のような情報通信産業分野での「本気の国策」は実施されていない。今こそ日本版を実施すべき時だ。

日本は、昔からビジネスソフト分野でも「エンタメ」ソフト分野でも、任天堂のゲームを除くと、後進国である。国策の成長戦略で、「クールジャパン」が提唱されているものの日本の場合、特にゲームコンテンツ分野では、任天堂のような民間グローバル企業が「クールジャパン」を牽引していくのが好ましいのではないか。

矢田 真理 立命館大学ゲーム研究センター客員研究員

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やだ まり / Mari Yada

1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年野村総合研究所入社、その後外資系証券会社、長銀総合研究所、野村證券などを経て、2012年に立命館大学衣笠総合研究機構ゲーム研究センター客員研究員就任。1991年から、「新規成長企業群」調査の一環で、ゲーム産業の調査を開始し、1996年には単著「ゲーム立国の未来像」(日経BP社)を出版。現在、グローバルにゲームの調査研究を行いつつ、資産運用セミナーの講師や日本のゲーム産業/企業動向に関するインタビュー対応(海外投資家を含む)、資産運用、IPO支援関連等のスポットコンサルティングなども行っている

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