「安倍政権で日本経済復活」は本当か? 円安進行なのに、実質GDPはマイナス成長

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 最新
拡大
縮小

名目輸出額では輸出減の生産抑制効果は分からない

ここで、輸出、輸入の動向を、名目値と実質値で比較してみよう。

名目値(季節調整系列)で見ると、7~9月期から10~12月期にかけての輸出、輸入の成長率は、それぞれ、マイナス0・3%、3・0%だった。実質での成長率は、マイナス3・7%、マイナス2・3%だ。

名目と実質の差は、価格効果(円安効果と外貨建て価格の変化の効果)だ。輸出は実質で3・7%と減少したのに対して、価格効果(大部分が円安効果と見られる)で3・4%引き上げられ、その結果、名目では0・3%の減に留まった。輸入は、実質では2・3%減少したが、円安効果と外貨建て価格の上昇効果で、名目値では3・0%増加した。価格効果は、5・3(=3・0+2・3)%だ。このうち円安効果が3・4%とすると、外貨建て価格の上昇効果が1・9%あったことになる。

貿易統計の数字は名目値なので、円安下では、そこに表われる輸出減より実質の輸出減は大きい。国内生産に影響するのは、実質輸出だ。したがって、貿易統計の輸出額の数字だけを見ていると、国内生産に対するマイナス効果を過小評価することになる。貿易統計を見る場合には、前回そうしたように、輸出数量指数をも見ることが重要だ。

輸入についてはどうだろうか。10~12月期では、実質輸入が減ったにもかかわらず、円安効果と外貨建て価格の上昇のため、名目輸入額は増えた。つまり、輸入増大のGDP抑制効果は、貿易統計の輸入額の数字だけを見ていると、過大評価してしまうことになる。ただし、名目輸入額の増加それ自体にも意味がある。なぜなら、それが、国内生産のコストアップ要因になるからだ。それは、製造業の利益を圧迫するだろう(これについては、後で述べる)。

次ページ円安の効果は思ったほど大きくない
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT