2012年10~12月の実質GDP(国内総生産)の対前期比成長率(季節調整系列)は、マイナス0・1%となった。年率換算では、マイナス0・4%だ。7~9月期の対前期比成長率マイナス1・0%に比べて絶対値は減少したものの、4~6月期以降のマイナス成長が続いていることには変わりはない。
「自民党政権の誕生で日本経済に転機がおとずれ、低迷状態から脱却して明るい見通しが開けつつある」と言われることが多い。しかし、現実に生じていることは、それと正反対だ。7~9月期に比べて、実質GDPは増えたのでなく、減ったのだ。ただ、落ち込み方のスピードが低下しただけのことだ。落ち込みつつあるという事実に変わりはない。
需要項目別に見ると、マイナスの絶対値が大きいのは、前期に引き続き輸出であり、対前期比成長率はマイナス3・7%となっている。年率換算ではマイナス14・0%だ。11月頃から顕著になった円安にもかかわらず、実質輸出が減少を続けているという事実に注意が必要だ。しばしば、「通貨切り下げによる輸出ドライブの世界的な競争が起きている」と言われるのだが、少なくとも12月までの期間に関するかぎり、そうした事態にはなっていない。
民間企業設備は、マイナス2・6%(年率換算マイナス9・9%)であり、12年1~3月期からのマイナス成長が継続している。また、財貨サービスの輸入は、前期にはマイナス0・5%だったが、10~12月期にはマイナス2・3%(年率換算マイナス9%)となった。民間住宅は、東日本大震災被災地での建設や住宅エコポイントの締め切りが10月だったことの影響で、プラス3・5%(年率換算14・7%)と大きく伸びた。これが輸出や設備投資の減少を打ち消して、GDPの下落幅を小さく抑えた。GDPに対する民間住宅の寄与度は0・1%なので、仮にこの特殊要因がなければ、GDPの対前期比成長率は、マイナス0・2%以下になっていたはずだ。
以上で見たのは、7~9月期から10~12月期への変化だ。10~12月期の値を対前年同期比で見ると、輸出はマイナス5・7%、民間企業設備はマイナス8・7%となっている。実質GDPは0・3%増だが、これは、公的固定資本形成の伸び(18・9%)によるところが大きい。
以上をまとめれば、次のとおりだ。円安が進行しているのに、実質輸出は図のように減少を続け、それが設備投資をも抑えることになっている。GDPの下落幅が抑えられたのは、円安とは関係がない住宅投資の増という特殊要因による。
前回、貿易統計(とくに輸出数量指数)などの動向から、10~12月期もマイナス成長の可能性が高いと述べたが、それが実際の数字で裏付けられたわけだ。
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