中国共産党とメディアの”仁義なき戦い” 南方週末は中央宣伝部に勝利したのか

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こうした南方系メディアの隆盛を、かねてから中央宣伝部は苦々しく思っており、その影響力をいかに削ぐかに腐心してきた。今回、記事差し替えの指揮を執った広東省の宣伝部長は元新華社通信の副社長で、明らかに南方つぶしに送り込まれた。昨年1年間で1000回を超える記事の検閲を行っていたこともわかっている。

先日、新京報は、宣伝部の圧力によって、南方週末を批判する人民日報系の環球時報の社説を掲載するよう強いられた。実際のところ、環球時報の社説を掲載しない新聞は中国各地にはたくさんある。にもかかわらず、新京報だけが宣伝部から厳しく掲載を求められた背景には、南方週末つぶしの意図があったと考えるのが自然だろう。

ツイッターを通じて広がった支持の声

南方系のメディアの背後には、いわゆる中国におけるリベラル文化人・知識人の大きな支持層が存在している。中央宣伝部にとってはむしろこちらのほうがやっかいかも知れない。彼らは南方系メディアにしばしば登場し、影響力を高めた「南方文化人」とも言える人々で、作家の韓寒、政治学者の賀衛方など論壇ヒーローも多い。

そうした南方系文化人の一人と目され、昨年、尖閣諸島問題で日中双方に自制を求める署名を呼びかけた崔衛平・北京電影学院教授と、最近、日本で会うことがあった。彼女は「今回の最大の収穫は、ネットの助けを得て、幅広い公民社会の集結が実現したことです」と話していた。

「公民」とは中国語で一般大衆を意味するが、伝統的に共産党支持者を示す「人民」と区別して語られている。今回、南方週末を支持する声は、文化人、知識人だけではなく、弁護士や企業経営者、農民にまで拡大し、習近平指導部も無視できないほどの大きなうねりとなった。

南方週末や新京報の状況を伝える情報が内部から中国版ツイッター「微博」にアップされ、削除されるまでの数分間のタイムラグに南方週末の支援者たちがタスキリレーのように次から次へと転送して情報を一気に拡散させ、当局の削除が追いつかない状況を生み出した。

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