アメリカは「安倍外交」を歓迎するのか? スタンフォード大学・ダニエル・スナイダー氏に聞く(上)

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今月末に訪米する安倍首相。普天間基地移設問題、TPP、対中戦略など、重要テーマが目白押しだ(写真:AP/アフロ)
今月下旬に予定される、安倍晋三首相のアメリカ訪問。民主党政権下で揺らいだ日米関係の立て直しは、安倍政権の最重要テーマのひとつだ。これからの日本外交は何を目指すべきか、どう日米関係を発展させていくべきか、そして、どう中国の台頭に対応すべきなのか――スタンフォード大学アジア太平洋研究センターで副所長を務める、ダニエル・スナイダー氏に聞いた

 

――安倍晋三首相と、鳩山由紀夫元首相はバックグランウンドも、外交観も大きく異なりますが、両者にはひとつ共通点があるように感じます。それは、「日本は国としてのアイデンティティ、世界の中での役割を再定義しなければならない」という思いです。

その重要な議論は、日本国内でいまだに決着がついていない。

「日本はアジア諸国との関係において、また西洋との関係において、自国をどう位置づけるべきなのか」というテーマは、戦前期からつねに議論されている。

戦前期には、リベラルな国際主義と「大日本主義」と呼ばれる人々との間で、大きな論争が繰り広げられた。前者の立場は基本的には、これからの日本は西洋(英国、そして、ある程度は米国)と協調し、西洋がリードする秩序の一部となるのが最善だと考えていた。

一方、「大日本主義」の人々は、独自の帝国を築き上げることによって、日本を西洋の帝国主義国家に対抗する国にしたいと考えていた。この主義によると、アジア諸国への進出は、日本が大国の仲間入りをするために不可避な道だということになる。

当時はごく少数だったが、「小日本主義」を主張した第3のグループもあった。そのほとんどは戦後に総理大臣を務めた石橋湛山につながる人たちだ。

このグループは、必ずしも西洋と手を組まなくても、帝国主義的な国家にはならずにアジアのリーダーとなることは可能だ、という立場をとった。日本は中国、朝鮮といった国々が後に続く模範となることができる、という考えだ。事実、孫文は、明治の日本に倣って中国を近代化し、西洋の植民地主義から解放することを念頭に置いていた。

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