安倍政権に、アメリカが期待していること

マイケル・グリーン氏が語る日本外交(下)

(撮影:梅谷秀司)
自民党の圧勝に終わった12月16日の衆議院選挙。この総選挙がもつ意味とは何か。そして、新首相が、日米関係など外交面で取り組むべきテーマとは何か。ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)の日本・朝鮮担当部長などを歴任し、現在、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)でアジア・日本部長を務めるマイケル・グリーン上席副所長に聞いた(インタビューは選挙前に実施)。

 

※インタビュー(上)はこちら

――河野談話の見直し、靖国参拝、尖閣諸島への公務員常駐施設の建設が、結果として、中国を利するとあなたは主張しています。そのことを、安倍氏は十分理解していると思いますか。

私は、安倍氏はこの点を理解している、と楽天的に見ている。

理由は2つある。第一に、それまで内閣官房長官を務めていた安倍氏は06年に首相に就任すると、政治家として成長した。内閣官房長官の立場で追求してきたアジェンダの一部を取り下げた。中国との関係を安定化させ、韓国との関係を強化し、オーストラリアおよびインドとの間で新たな安全保障合意に道を開くスタンスをとった。これらは外交政策に関する大きな業績だった。安倍氏はこの点がよくわかっている。

第二に、安倍氏に助言するアドバイザーには2つのグループがある。一方は、安倍氏や菅義偉元総務大臣を含む同世代のグループで、1990年代に発表された河野談話に憤慨している。彼らは、河野談話はいわゆる「慰安婦」問題を、90年代当時にボスニアで問題となっていた性的暴行と道義上同じだとでっち上げるものだととらえた。こういう文脈で、河野談話は問題視されてきたのだ。

90年代当時ボスニアでは、戦争の道具として性的暴行を利用するという問題が起こっていたが、安倍氏や下村博文氏をはじめとするこの世代の人たちは、第2次世界大戦当時の日本が本質的にこれと同じことをしていたと認める河野談話に、強い憤りを感じた。実際には、この2つはまったく別物だ。ただしその違いは、日本に対する非難を特に軽減するものではない。

現時点で安倍氏がこれらの問題を重視するのは、石原前東京都知事および橋下大阪市長と足並みをそろえたい、右派の中で彼らに出し抜かれたくないという政治的努力なのだ、という解釈もできる。

しかしこの世代の政治家の一部に、河野談話が発表された経緯について強い憤慨があるのも事実だ。これには非常に根深いものがある。

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