中国は、南沙紛争で軍事衝突の道を選べない 同床異夢の状況に日本はどう応じるべきか

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いずれにせよ、米国防総省の歯切れの悪いコメントは、事実上の遺憾の意の表明である。恐らく、それが無ければ、中国側は、米側が南沙問題での対応のステージを一段上げて来たものと解釈して疑心暗鬼に陥ったことだろう。米側としては、真の作戦意図はともかく、その後始末としては、そう弁解せざるを得なかったということだろう。

南沙諸島問題を巡る日本での報道は一息ついた感もあるし、良かれ悪しかれ、米国と中国中心の報道になる。だが、12月だけでも、台湾が領有する南沙最大の面積を持つ太平島での灯台設置を巡って、ベトナムが台湾に抗議をしたり(12月13日)、その太平島と、中国が占領するスビ礁の近くにあるフィリピンが占領するパグアサ島へ、フィリピンの若者が上陸したところ、フィリピン政府が若干の不快感を表明するに至ったのは、12月27日の出来事である。ベトナム漁船がフィリピン漁船に襲撃され、一人が射殺されたのは11月26日。

このように、南沙を巡る状況は極めて複雑で、南沙に権益を持つ周辺各国は、同床異夢と言っても過言では無い。

中国は戦争をしたいわけではない

中国は次に何を仕掛けて、われわれはどう対応すべきなのか。中国とて次の一手は難しい。このまま周辺国との対立をエスカレーションすることはまず考えられない。

中国は南沙問題に関して決してフリーハンドを持っているわけではない。今の共産党政権は、常に「負けられない治世」を強いられている。内政にせよ外交にせよ、共産党指導下の中国は全てがうまく回っており、人民の未来はバラ色だと宣伝し続けなければならない一党独裁政権にありがちなジレンマに陥っている。

万一、南沙を巡って戦争に発展し、中国軍がボロ負けするような事態にでもなれば、党も大きく面子を失い、それはたちまち世情不安を招くだろう。従って中国とて、南沙を巡って戦争をしたいわけではないし、戦争をする覚悟があるわけでもない。

中国は今回、オバマ政権が無力であることを見切って埋め立てと基地建設という行動を起こしたが、さらにステージを上げようとすれば、周辺諸国の反発を招くことは避けられないだろう。今はまだ、各国とも、米海軍との共同訓練を個別に行うレベルに留まっているが、中国が、南沙基地化の第2段階として、海域に於いて軍事力の誇示や威嚇を常態化すれば、恐らく、アメリカを核にした、南シナ海軍事同盟の発足を招くことになるだろう。それは、中国が避けたい状況だ。

この状況では、日本にさしたる選択肢はないし、アメリカが動こうとしないものを、率先して地域安定のためにと、中国を刺激する形で動くべきとも思えない。

日本がアメリカの誘いに乗って南沙パトロールに海自艦隊を派遣したところで、梯子を外されるのは解り切っている。海自は、「南シナ海ひとりぼっちの旅」を強いられるだろう。

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