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2015年3月に北陸新幹線が金沢まで開通したことで、首都圏からアクセスしやすくなった北陸。「日本の魅力再発見」をテーマに「日本の旬」の魅力を紹介するJTBグループのキャンペーンも10月から、ここ北陸を取り上げている。これまでJTBグループは旅行業の枠を超え、その土地に眠る観光資源を掘り起こし、人に「行ってみたい」と思わせる仕組みを作り出してきた。その人の流れは今、国内だけにとどまらず、世界から日本へと向かっている。なぜ、JTBグループは人を集め、心に響く感動を生み出せるのか。そこには確かな理由がある。
石川県白山市にある白山比咩神社に奉納された恋文

「恋のしらやまさん」で
新しい北陸に出会う

国内最大手の総合旅行業、JTBでは1998年から半期ごとに、日本全国のあるエリアにフォーカスし、地域活性化による旅行需要の創造を目指す「日本の旬」というデスティネーションキャンペーンを行っている。10月からスポットを当てているエリアは、2015年3月に金沢まで新幹線が開通した「北陸」。13年に、「今後、最も注目を浴びる地域」として、すでに白羽の矢が立っていた。

時を同じくして、金沢にほど近い白山市では危機感を募らせていた。「北陸新幹線によって金沢へ来る人は増えるだろう。だが、その人の流れも金沢の先にある白山には波及しないのではないか」ということだ。

そこで白山市はJTB中部の金沢支店に、地元ならではの新しい観光コンテンツを開発できないだろうかと相談を持ちかけた。金沢支店は、観光コンテンツ開発で多くの成功事例がある同社の交流文化部と連携し、13年8月から3回にわたるワークショップを開催することになった。

JTB中部 交流文化部
地域交流プロジェクトマネージャー
武田道仁

講師を務めた交流文化部・地域交流プロジェクトマネージャー・武田道仁氏は「観光業に従事する方たちだけではなく、地域のさまざまな方々と一緒に、たった一つでもいいから、まちの宝となるものを磨き上げ、交流を生み出しましょう」と提案したという。

その言葉を受け、多彩な人たちが参加して議論を重ねる中で、白山市の誰もが親しんでいる白山神社の総本山で縁結びの神様を祀る白山比咩(ひめ)神社、通称「しらやまさん」を自分たちの宝とすることを決めた。それぞれが、これまで自分が感動したシーンを洗い出して、どういう演出をすれば喜んでもらえるかを考え、金沢駅から「しらやまさん」に至るまでの具体的なストーリーを練り上げていったのである。

その結果が、14年9月にスタートした「恋のしらやまさん」だ。金沢市内の北陸鉄道石川線・野町駅から片道約29分の鶴来(つるぎ)駅へ電車で移動、「しらやまさん」にお参りし、鶴来のまち並みや文化・歴史・味覚・人とのふれあいを堪能する「小さな旅」を企画。野町駅~鶴来駅の往復乗車券や、江戸時代から伝わる干菓子の中に小さなおみくじが入った「辻占(つじうら)」の引き換え券などがセットになった1800円の「恋のしらやまさんきっぷ」を購入すると、もれなく公式ガイドブックと、白山比咩神社に奉納できる「奉納恋文」がもらえる。

「子どもたちに残せる交流の種を生み出すことができ、JTBさんには感謝しています」と白山市観光連盟の舟津能子氏が話すとおり、企画開始から約1年、北陸エリアのみならず首都圏などからも婚活や恋愛成就祈願の若い女性の来訪が増え、鶴来のまちに華やかなにぎわいをもたらしている。

縁結びの神様を祀る白山比咩神社、通称しらやまさんを中心にまちを巡る小さな旅「恋のしらやまさん」を企画。北陸鉄道石川線・野町駅から鶴来駅の往復乗車券、干菓子の中におみくじが入った辻占の引き換え券などがセットになった切符を発売したところ、鶴来のまちはこれまで見ることのなかった若い女性でにぎわうようになった
【受け継がれるSpirit1
JTB&インバウンド

海外から日本を訪れる外国人の流れを指すインバウンドという言葉が、すっかり一般的になった。ここ数年、その数は過去最高を更新しているが、もともとJTBグループはインバウンドの促進を目的に誕生したことをご存じだろうか。

時は、欧米各国に追いつけ追い越せと、日本が近代化に向けてさまざまな外国文化を取り入れていた明治時代。外国人観光客を日本に誘致し、日本文化への理解を深めてもらうのはもちろん、観光によって外貨を獲得し、国家繁栄を実現する重要性が説かれたのである。そのためには、日本の情報を提供すると同時に、スムーズに観光ができるよう外国人と日本人との間をとりもつ機関が必要と考えられた。それこそが1912年に設立されたJTBグループの前身、ジャパン・ツーリスト・ビューローなのである。

当時、日本において外国人の観光誘致によって経済発展を目指す取り組みは極めて先進的だった。現代日本の国家戦略にも通じる挑戦の中で試行錯誤を重ね、人と人、人と文化を交流させる大切さ、すばらしさ、また交流を生み出すノウハウを体得していったのがJTBグループだ。それは、いまもしっかりと受け継がれていると言えるだろう。

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