孤独や葛藤を歌にすることで、自分自身が救われる。その経験が、歌詞への向き合い方も変えていった。
「ふんわり歌って、ふんわり受け止められるくらいなら、たとえ届く相手が限られていても、誰かに深く突き刺さるような歌詞を書くのもいいなと思うようになりました」
「リトリート」のラストには、こんな願いがつづられている。
「ねえ いつかはどんな私でも愛せますように」
1つの夢をかなえた先で、また新しい夢が生まれる
アルバム『Narrative』のリード曲「Runner」には、倒れても立ち上がり、不完全な自分を受け入れながら走り続ける意志が込められている。
「やっぱり私は、何かに挑戦しているときの自分が好きなんですよね。そういうときに、生きがいを感じるんです」
日本武道館での単独公演を成功させた今も、その思いは変わらない。
「武道館公演は大きな節目でした。でも、あくまでもターニングポイントであり、通過点なんです。ゴールではないということは、自分自身でも思っていました」
次に見据えるのは、地元・大阪の大阪城ホールでのライブだ。
「つねに自分を更新して、超えていけるアーティストでありたい。節目節目で『今年もこの場所でやり遂げたな』と思えるような、大きな出来事を作っていきたいです」
一つの夢をかなえた先に、また新しい夢が生まれる。その思いは、アルバム『Narrative』のタイトルにも重なる。山本は自身のSNSで「ここからまた、私の人生という名の物語は続いていく」とつづっている。
ただ、10年間の活動を経て、何より大切だと感じるようになったことがある。
「10年やってきただけでも、続けることって簡単ではないんだなと感じました。これが15年、20年、30年となれば、なおさらだと思うんです」
では、これから何を大切にしていくのか。
「すごく基本的なことですけど、まずは続けること。そして、活動を続ける中で、大きな出来事や新しい目標を1つずつ実現していきたいですね」
シンガーソングライターになる夢をかなえるために、アイドルの道を選んだ。やがてその夢を実現し、10年の歳月を重ねた。
だが、夢をかなえた先にあったのは、喜びだけではなかった。迷いや葛藤を抱え、ときには音楽から離れることもあった。
そんな歳月を経てなお、かなえたい夢がある。自分の手で、多くの人に愛される一曲を生み出すことだ。終わりも、近道もない。自分の言葉とメロディーを紡ぎながら、山本彩は走り続ける。


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