敬意は目に見えない。それでも人は、目に見える手がかりから、相手の内面を推し量る。
たとえば、ある心理学の研究では、大学教師が授業をしている様子を、30秒ほどの無音の映像にした。その映像を、教師を知らない人たちに見てもらい、教師の印象を評価してもらった。すると、この評価は、学期末に学生たちがつけた教師への評価と、同じ傾向を示した(※3)。
目上にあたる松井新監督が、自ら帽子を脱いで声をかけた
なぜ教師の授業を受けたことのない学生も同じ評価をしたのか。この一致は外見の魅力度だけでは説明できないだろう。わずかな振る舞いにも、その人を推し量る情報が含まれているということだ。
ただし、この実験で見る人が手がかりとしたのは、授業中の表情や身ぶりといった振る舞いすべてだ。脱帽をめぐる今回の騒動のように一度の所作から、その人の敬意の有無まで読み取れるわけではない。
人が相手を判断する材料は、動作だけではない。服装、髪型、身につけるものも第一印象に影響し、相手の社会的な属性や心の状態を読み取る手がかりになる(※4)。帽子を脱ぐという所作は、敬意という見えない内面を伝える、見える手がかりだ。
今回の場面では、目上にあたる松井新監督が、自ら帽子を脱いで声をかけた。「挨拶では帽子を脱ぐ」という基準が、その場の全員に見える形で示されたことになる。ほぼ全員がそれに従う中で、帽子をかぶったままの2人は、映像の中でも際立ったのだ。


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