そしてもう1つ、勘案事項として考えられるのが、選挙直後に取り沙汰された買収疑惑である。リクード側が「カタールやトルコからの外国資金が不当に流入し、現金が入った封筒やガソリンチケットでアラブ系有権者が買収された」と告発した。
確かに、アラブ系政党が約2倍の議席を得るに至ったのは、イスラエル人口の約2割を占めるアラブ系市民の投票率の急増にある。中央選挙管理委員会の指示を受け、シャバク(イスラエル総保安庁)が調査を開始したという。
一方で、イスラエル警察は「過去の選挙と比較しても、異常な活動や組織的な直接買収の客観的証拠は見当たらない」として告発を却下している。選管も「投票プロセス自体は法に則って適正に行われた」と説明している。カタール外務省は「イスラエルの政治家による責任転嫁であり、選挙干渉の事実は一切ない」と疑惑を全面否定している。
組閣への泥仕合、結局ネタニヤフか?
現地アナリストの多くは、この買収疑惑について「仮に海外NGOなどから投票を呼びかける支援があったとしても、それが有権者の『直接買収』と同義ではない。右派政党が騒ぎ立てる最大の目的は、過半数を割り込んだ自陣営の失敗から世論の目を逸らし、躍進したアラブ系政党の政治的正当性を失墜させるための情報戦(プロパガンダ)」と冷徹に分析している。
どの党首も組閣で過半数を取れず、買収疑惑などの泥仕合が続いたなら、最も利益を得るのはネタニヤフ首相だと指摘されている。
イスラエルの制度上、組閣交渉が不成立に終わった場合、現職の首相がそのまま暫定首相として権力を維持し続ける。暫定政権下では、政権内部からの無理な法案提出や予算配分の要求がストップする。
さらに、対ハマス・ヒズボラ・フーシ派・イランとの戦時体制を理由に「国家緊急事態」を主張し続けることで、汚職疑惑などの裁判を抱えるネタニヤフは自らの責任追及を先送りすることが可能になる。
そうなると、イスラエルは政治的空白を抱えたまま、終わりの見えない有事体制とネタニヤフ首相による「時間稼ぎの統治」を継続することになるとアナリストは指摘する。
誰がウルトラCを出すのか、あるいは再選挙に突入するのか。ここ数カ月の駆け引きの行方が注目されている。


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