このように今回の事件は、古典的なランサムウェア攻撃に多重恐喝的な手口を使い、犯人自身が事件の進行をウェブサイトで発信するという“デジタル劇場型犯罪”ともいえる方法を用いている。一方、大規模な侵入を成功させた一方で、ちぐはぐな犯行の稚拙さも大きな特徴である。
「稚拙=素人」とは限らない
とはいえ、犯人の行動に稚拙な部分があるからといって、知能が低いとか、犯罪経験が浅いとか、若年者であると断定することはできない。逆に、一見不合理な行動が、相手を混乱させるために意図的に選択された可能性も残る。さらに、複数人による犯行であれば、技術的な侵入を担当する者と脅迫文を作成する者が異なる可能性もある。
現時点で重要なのは、犯人像を分析しながらも、それを一つの「仮説」に収束しないことである。10月29日には、GMOが社内の専門チームによって犯人特定につながる有力情報を入手したと発表した。同社は犯人が最後に要求した額と同じ100万ドルを上限とする懸賞金も設けており、事件は新たな局面を迎えつつある。
いずれにしても、私たちが警戒すべきなのは、犯人の作り上げた筋書きに社会全体が取り込まれてしまい、手のひらの上で踊らされないようにすることである。犯人が主導する「劇場」に、企業も報道機関も一般市民も、無批判に観客や出演者として参加せず、冷静な態度を崩さないようにして、粛々と捜査の進展を見守る態度が重要になってくる。それが、デジタル時代の劇場型犯罪に対抗するための重要な態度だといえるだろう。


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