高い山を登る人は、日ごろからトレーニングを重ねて登山に臨みますが、低山は日ごろ運動をしていない人が、「近いから」「軽いハイキングだから」と準備なしで登りがちです。
山歩きの消費エネルギーは「体重(荷物込み)×行動時間×5kcal」が目安です。体重50kgの人が4kgの荷物を背負って4時間歩けば、約1080kcalになります。そしてこの約1080kcalというのは、ご飯を茶碗4~5杯分ほど消費する計算です。4kgの荷物といっても想像しにくいでしょうが、リュックサックに水、食事、防寒着、タオルなどを入れれば、おおよそそれくらいの重さになります。
加えて、坂を上り下りするための脚の筋肉や心肺の力も必要になります。「いつもウォーキングしているから大丈夫」という人もいるでしょうが、坂を登る筋力、心肺機能は平地を歩くだけでは十分に鍛えられません。
結果、慣れない体に突然これらの負荷がかかると、脚の疲れによる転倒、大量の汗による脱水、心臓への負担が一度に押し寄せてしまうのです。
さらに、秋は日没が早いうえ、山だと平地より早く暗くなります。暗さへの焦りは歩きのペースを上げさせ、心臓への負担や転倒リスクを増やします。
統計に表れにくい「山での突然死」
病気による遭難のなかで特にこわいのが、心臓や脳の病気による突然死です。
上り坂では心拍数と血圧が跳ね上がります。それにより、動脈硬化が進んだ血管の内側にできた粥腫(脂のかたまり)が破れ、血栓(血の固まり)が血管をふさぐと、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。脱水で血液が濃くなるとさらにリスクは高まります。
体が温まっていない登り始めは、血管が十分に拡張できていないので血圧が上がりやすいですし、睡眠不足や前夜の飲酒の影響が残る早朝は、脱水かつ睡眠が足りないことで血圧上昇が起こりやすく、さらに注意が必要です。


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