有料会員登録
ビジネス #「永遠の化学物質」PFAS―リスクの深層

"永遠の化学物質"PFAS、アメリカでは100億ドル超の和解事例も日本では有害性評価一致せず膠着状態

5分で読める 有料会員限定
世界各地でPFASを巡る問題が起こり、企業側との争いが続いている(写真:PIXTA)

INDEX

「現時点ではPFOAによる健康被害が生じているとは認識していません」。今年6月に開催された定時株主総会で、ダイキン工業の竹中直文社長はそう強調した。

ダイキンの淀川製作所(大阪府摂津市)の周辺の地下水からは、有機フッ素化合物(PFAS)のうち、健康影響が指摘されるPFOAが高濃度で検出された。PFOAを製造していたダイキンは自社が「原因の一つ」と認め、地下水浄化などの対応を進めている。もっとも、周辺住民などが求める一層の情報開示、PFOAの汚染による被害補償の枠組み形成には、前向きとは言いがたい。

株主総会では、淀川製作所付近に住む株主がPFOAに健康への影響があることを前提に、住民への説明や補償について質問を重ねた。しかし、ダイキン側は、そもそも健康への影響が明確ではないとの立場で回答を繰り返し、質疑はかみ合わないまま終わった。

利便性が高い反面、一部で健康リスクが指摘される

化学上のPFASの定義は、アルキル基に複数のフッ素が結合した化合物群の総称とされている。細かな定義は国際機関や各国政府機関によってばらつきがあり、種類は1万以上におよぶとも言われる。水や油をはじく、熱に強い、薬品に強いといった様々な性質を持っている。

PFASそのものの開発は1930年代とされる。商業用途では米3M社が撥水、撥油性に優れるPFOS、PFOAなどの開発に成功した(いずれもPFASの一種)。50年代以降、その物質特性を生かし、様々な製品に活用されるようになった。身近なところでは、フライパンのテフロン加工が有名だ。そのほか、撥水性の繊維、化粧品、産業用途では泡消火剤や自動車部品、半導体の製造工程など幅広く使われている。

一方、極めて安定した性質から自然界ではほとんど分解されることなく、長期間にわたって残留・蓄積する。このため、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。90年代までには一部のPFASの環境や生物への影響に対する研究が進み、生物の血液に蓄積しやすいことが判明。人間の免疫への悪影響や、がんの発生率を高める懸念も浮上した。

3Mは2000年、PFOSやPFOAなど一部のPFASについて環境への影響を理由に、規制に先駆けて自主的な製造終了を発表。アメリカでは06年に米環境保護庁(EPA)がダイキンやAGCなど日本企業を含む化学メーカーに対し、PFOAの排出量、製品含有量の削減を求めるスチュワードシッププログラムへの参加を求め、15年までに関連物質の全廃を進めた。

EUなどでも規制は進み、国際的には化学物質を規制するストックホルム条約で規制された。09年にはPFOSが対象となり、19年にPFOA、22年にPFHxS、25年にLC-PFCA(いずれもPFASの一種)が加わった。26年時点では対象物質の数には各国でやや差異があるが、PFASのうちPFOSやPFOAを中心に、使用や製造を廃止する方向では共通する。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数