最近、日本で相次ぐサイバー攻撃によって、デジタル化が進む日本社会の脆弱性が露呈し、企業活動だけでなく私たちの日常生活にもさまざまな影響が波及した。サイバーセキュリティの重要性を、改めて実感した人も少なくないだろう。
振り返れば、日本ではこれまで、サイバーセキュリティに関する高度な技術や専門性が、十分に評価されてこなかった面もあるのではないか。また、「ハッカー」という言葉には不正侵入や犯罪行為のイメージがつきまとい、教育の場で攻撃技術を教えることにも、倫理的な抵抗感があったように思える。
人気漫画『トリリオンゲーム』には、天才ハッカーが企業のセキュリティ上の問題を指摘しても、面接官の多くがその重要性を理解できないなか、たった1人、その才能を見抜く人物が登場する。綿密な取材と技術監修に裏付けられたフィクションではあるが、高度な技術を持つ人材をどう評価し、その能力を社会で生かしていくのかという問題を、象徴的に描いているのではないだろうか。
こうした中、千葉県のコミュニティラジオ局・ラジオ成田で「台湾日本RadioExpress」という番組をともにおこなっている吉村剛史・元産経新聞台北支局長から、つねにサイバー攻撃の脅威にさらされてきた台湾の対策、とりわけ中高生への実践的な教育について興味深い話を伺った。
番組でも紹介し、大きな反響があった。現在の状況からも、台湾の事例を紹介することは意義があることだと考え、台湾の次世代人材育成の取り組みを紹介したい。
1日約270万回、サイバー攻撃にさらされる台湾
吉村氏は、日本で相次ぐサイバー攻撃によって社会の脆弱性が露呈した一方、台湾との間には危機意識や対応に大きな違いがあると指摘する。
台湾の情報機関である国家安全局が2026年1月に公表した報告によると、25年に中国側から台湾の重要インフラに対して行われたとされるサイバー攻撃や侵入の試みは、1日平均263万回、年間では約9億6000万回に上った。前年と比べても約6%増加している。
攻撃対象は政府機関だけではない。エネルギー、通信、交通、医療、金融、さらには世界的な半導体産業を支えるサイエンスパークや工業団地など、市民生活と経済活動を支える幅広い分野に及ぶ。
こうしたサイバー攻撃は、直接的な軍事攻撃を伴わずとも、社会インフラを機能不全に陥らせ、経済活動に深刻な打撃を与える危険性をはらんでいる。
吉村氏はこうした脅威を、平時と有事の境界が曖昧な「グレーゾーン」の問題として捉える必要性を指摘する。
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