宮藤作品を考えるうえで、見逃せない映画がある。それが、黒澤明監督の『どですかでん』(1970年)だ。
10年7月放送の『メモリーズ 我が心の黒澤明』(日本映画専門チャンネル)の中で、宮藤は同作を「生涯ベストワン」と公言。自身が手掛けるドラマでは、脇役たちの家の中の生活まで描くことが難しい現状があると口にしたうえで、同作を観ると「やっぱそうじゃないよなと思っちゃいますよね」と語っている。
この映画は、少年・六ちゃんが路面電車の真似をして街を走り回るシーンを軸に、貧しい街に暮らす人々の生活や欲望を描いた群像劇だ。原作は山本周五郎の小説『季節のない街』。23年、宮藤自身もこの小説をもとにした同名タイトルのドラマで企画・監督・脚本を担当。Disney+で先行配信された。
『俺のこと、なんか言ってた?』でも、主人公の物語だけでは完結しない人間関係が描かれている。高瀬川の因縁のライバル俳優・壬生大也(濵田)は、はた目には順風満帆な人生に見えるものの、「いつか消える」という不安に怯えながら生きている。
ドラマの撮影現場でチーフ助監督を務める川島一機(松山)は、映画監督を目指していたものの薄給の忙しない日々で身体はボロボロ。やがて監督デビューを果たすが、身体を壊してしまう。主人公の視点だけでは捉えきれない各々の事情が、物語に奥行きを与えているのだ。
多彩な人物を登場させるだけでなく、一人ひとりに独自の動機を持たせ、主人公と絡み合って変化していく。まるで『どですかでん』から受けた影響を、自身のフィルターにかけて再構築しているかのようだ。
ネット批評や考察にとまどい
他人の言葉に関心を持ち、それを創作に生かす宮藤だが、ネットの批評や考察に戸惑うこともあるようだ。
24年9月13日放送の『武田砂鉄のプレ金ナイト』(TBSラジオ)にゲスト出演した宮藤は、ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の第1話放送後、「せっかく社会がここまできたのに戻すのか」といった書き込みを目にし、ネット上の批評を「怖くて見れなくなっちゃった」と語っていた。
同作は、昭和の価値観を持つ中年男性が現代にタイムスリップする物語だ。時代による価値観の違いを笑いを交えてドラマに盛り込んだ一方、その描き方がどのように受け止められるのかという問題とも向き合うことになった。


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