「最初にうちを選ぶ理由って、まずは『人間関係』なんです。うちの採用は人格重視で、シフトの希望も通りやすい。現場には頼れる有資格者がいるので、心にも余裕が生まれます。安心して働けるようになると、次は成長を実感したい、自分の頑張りを認めてほしいと思うようになるんです」
介護はつらい。だけではないかも
開いたままの工作室の扉から、一人の男性が「紅茶の時間じゃないか?」と顔を出した。「〇〇さん、紅茶はさっき飲みましたよ」とすかさず川治さんが立ち上がる。説得するように背中をさすって促すと、男性は静かに席に戻っていった。
「一人ひとり、ルーティーンが決まっています。それを一度でも崩してしまうと、それまで積み上げたことが全部崩れてしまうこともあるんです。だから、お話ができる方もできない方もコミュニケーションをとって、何が必要なのかを見極めていくことが大事なんです」(川治さん)
自分のなかにある介護職のイメージと目の前の光景が、なかなかリンクしていかない。それほどまでに、「介護職はしんどい」という固定観念が強いことを実感する。
常に人手不足の介護施設、職員の疲弊、支援を求める家族たちの苦悩……。現実は、簡単には変わらないだろう。現場や家族の窮状は、引き続き報道し、改善していかなければならない。
ただ、厳しい現実を伝える報道が重なるほど、「介護はつらい仕事だ」というイメージも強まっていく。だが、介護の現場にあるのはそれだけではない。
先ほどから同室で静かに工作をしていた車いすの男性が、興味を抑えきれずに取材中に声をかけてきた。11月に実施される、ビジョナリー主催「ボディパフォーマンスコンテスト」に出るのだと、立見さんと一緒に力こぶを作ってくれた。


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