豪華な生活を見せれば自慢だと批判され、庶民的な生活を見せれば行儀が悪いと批判される。どちらにしても否定的に受け取られるのであれば、問題は個々の行為そのものではなく、その人物に対する先入観の方にあると考えられる。
こうした現象を考えるうえで参考になるのが、かつての辻希美に対する激しいバッシングだ。元モーニング娘。の辻は、07年に20歳で結婚し、出産後はママタレントとして活躍するようになった。ブログで料理や子育ての様子を積極的に公開していたが、そのたびに些細なことで批判され、いつしか「炎上女王」のような存在として扱われるようになった。
辻に対する批判は、料理の内容や子供の弁当、家族での外出など、日常生活の細部にまで及んだ。実際にはごくわずかな批判しかなかったにもかかわらず、ネットニュースが大きな炎上として取り上げていたケースもあった。
辻の場合に特徴的だったのは、若くして結婚・出産した元アイドルという立場である。かつて無邪気で幼いイメージを持たれていた彼女が、妻や母親としての生活を発信するようになったことで、世間からその適性を厳しく評価されるようになった。何をしても不満を持たれるという点で、現在の板野をめぐる状況とよく似ている。
ママタレントが世間から期待される“役割”
共通しているのは、女性タレントが結婚や出産を経て、私生活を公開するようになった途端に、世間からさまざまな役割を期待されるようになることだ。妻としてどうあるべきか、母親としてどうあるべきか、家庭をどのように切り盛りするべきか。本人が何かを発信するたびにこのような基準が持ち出される。
SNSの普及によって芸能人の私生活の様子が広まり、親しみを感じる人もいる一方で、些細な部分を取り上げて批判することも容易になった。本人が意図していなかった背景に写っているものや、一瞬の表情、何気ない発言などが切り取られ、拡散されることもある。
批判する人の多くは、初めから先入観を持って彼女たちの粗探しをしている。そこには恵まれた生活を送る芸能人に対する嫉妬に加えて、家事や育児に関する細かいルールを押し付けることで、自分自身が味わった苦労を押し付けたいというねじ曲がった意識もあるのかもしれない。
板野が繰り返し批判される背景には、華やかな生活を送る女性に対する反感や、妻や母親に理想像を求める社会の価値観、そして些細な出来事を炎上に変えてしまうSNSの構造が重なっている。食卓に置かれた肉のパックをめぐる小さな騒動は、そんな現代社会の息苦しさを浮き彫りにしているのである。


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