経営者からトップダウンで一方的に指示を下すのではなく、自分たちで考えた「問い」を「スコキン」に設定し、それに自ら回答する。このプロセスを通じて、スタッフは受動的な作業者から、職場環境を改善するための主体者へと変わった。
結果として、9割が子育て中の女性スタッフという人員構成でありながら、経営者の指示に依存しない「自律自走できる組織」が完成したのである。
経営者としてのスタンスにも大きな変化が
スタッフ1人ひとりが自身の能力を最大限に引き出しやすい環境が整ったことで、心理的安全性も大きく向上した。この変化の過程で、赤羽社長自身の経営者としてのスタンスにも大きな変化があった。
アンケートは常に「匿名」で実施されたため、ネガティブな反応をはじめ、スタッフのリアルな本音も可視化されたという。
「リソースをしっかりと仕事に傾けて給与を伸ばしたいというスタッフもいれば、子育てやプライベートを重視するスタッフももちろんいます。画一的に、きょうは店に出てほしい、もっと頑張ってほしいと思うのではなく、各人に合わせた働き方と育て方を意識するようになりました」
バックオフィス部門にとっても、出退勤管理のデジタル化という「守り」の施策が、結果的に従業員の能力開発や定着率向上という「攻め」の組織開発へとつながった本事例は、多くの示唆に富んでいるだろう。
中小企業が抱える人手不足や生産性の課題に対し、フェリコの取組みは、「強制なき仕組み」であるナッジがいかに強靭な組織を創り上げるかを示す、極めて実践的なモデルケースだ。
フェリコ株式会社 代表取締役社長。大学卒業後、新卒で専門商社に入社し、4年間の勤務を経て退社。3人の子供に恵まれ、美容系の人事マネジャーとして社会人復帰。13年間勤務後、女性が家庭との両立が難しい業界と感じ、独立。「ヘッドスパ希翠(きっすい)」(完全紹介制サロン)を外苑前にて運営する。
すこやか出勤(スコキン)の提供者。スコキンは、出退勤のボタンを押す際に、「きょうの残業見込みは?」「微糖の缶コーヒーにはどのくらいの砂糖が入っているでしょう?」といった簡単な質問・アンケートに回答する、出退勤管理システム。ノーベル経済学賞受賞の「ナッジ」理論と「健康経営」を組み合わせたものであり、従業員が自ら考え、職場改善のための行動変容を促す仕組みとなっている。



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