現在の等々力は、自然の地理・景観に近代の宅地化需要が変化をもたらし、そこへ法的規制が加わったことで成立した住宅街なのだ。
「水害対策」と「大橋建設」でさらに発展するか
歴史的な紆余曲折を経て今の形となった等々力の高級住宅街だが、今後はどうなるだろうか。カギとなる場所は2つ、そのひとつは言わずもがな、等々力渓谷公園だ。
2023年に一時立入禁止の原因となった渓谷内での倒木は、病原菌に感染した樹木が通水機能を失う病気「ナラ枯れ」や、表土の流出など複数の原因によるという。同様の被害を未然に抑制・防止し、渓谷を適切に管理していくため、世田谷区は2026年度当初予算で「等々力渓谷公園の利用再開と保全・再生」へ約5000万円を計上した。こうした取り組みが継続され、等々力渓谷が地域のシンボルとして安定することは、その近傍にある高級住宅街のコミュニティにも良い影響をもたらすだろう。
もうひとつは等々力1丁目に隣接する、世田谷区玉堤の一帯。等々力1丁目から南へ歩いて玉堤2丁目へ入ると、中層の集合住宅が増える一方、築年数がかなり経っているであろう木造一軒家も目立ってくる。無機質なフェンスが各所に立てられ、やや荒涼とした街中を多くの工事用トラックが走っており、等々力とは大きく違う雰囲気だ。
この地域は国分寺崖線の「下」にあり、多摩川の河面に近く、区のハザードマップでも浸水域に含まれている。2019年(令和元年)10月の台風19号でも大きな被害を受けており、地域内にある東京都市大学世田谷キャンパスで、図書館の地下フロアが水没した事例が有名だ。
玉堤では今後の水害に対処するため、等々力渓谷を流れる谷沢川が増水した時に、その水量を分水路(地下トンネル)へと回す放流口の工事が進められている。主に玉堤地域の家と人々を守るための公共工事だが、隣り合う等々力の住民にとっても恩恵は少なくない。
そして放流口工事と併行して進んでいるのが、世田谷区と神奈川県川崎市中原区をつなぐ『等々力大橋』の建設だ。工事は当初予定より遅れつつも2030年度末の完成見込みとのことで、現在は多摩川の河川敷や川中に建設済みの橋脚が佇んでいる。
上述の通り、等々力の高級住宅街に住む人々の多くは自家用車持ち。大橋の竣工後、自動車による川崎方面へのアクセス性が向上すれば、それが街の価値と住み良さをさらに高めるはずだ。古墳の時代から近代の宅地化、そして現在進行中の放流口・大橋まで、等々力は「水と緑」に人間の「土木」が強く絡み合う街なのだ。


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