かつてスーパーの弁当は、安さを重視する人や、夕食を作る時間がない人のための商品という印象が強かった。しかし現在は、低価格商品から少し高級な商品まで、幅広い価格帯が並ぶようになっている。
スーパーには、大量仕入れによる調達コストの抑制や、セントラルキッチンによる効率化や、店舗網を生かした販売といった強みがある。また、大抵のスーパーでは店内調理を取り入れており、出来たて感や手作り感を打ち出すこともできる。
そして、価格を抑えた弁当で節約需要を取り込みながら、高価格帯の弁当も置くことで付加価値を求める消費者にも対応する。こうした品ぞろえの幅が、スーパーの競争力につながっている。安さを求める需要がある一方で、味や品質、専門性にお金を払いたいという需要もある。消費者の異なるニーズに合わせて商品を作り分けることが重要なのだ。
弁当市場の転換期
一方、こうした大手スーパーやコンビニの価格戦略は、街の弁当専門店にとって脅威にもなる。東京商工リサーチによると、弁当店の倒産は2026年に入り、8月までに83件に達した。これまで最多だった2025年の89件を上回る勢いだという。
弁当店にとって難しいのは、仕入れ価格や人件費が上昇しても、その分を販売価格に転嫁しにくいことだ。値上げすればお客様が離れる可能性があり、価格を据え置けば利益が削られる。大手企業には、大量仕入れや製造設備、物流網、多店舗展開による効率化といった強みがある。個人店が同じ価格競争に挑んでも、同じ条件で戦うことは難しい。
だからこそ、街の弁当店に必要なのは、必ずしも大手より安く売ることではないだろう。出来たてのおいしさ、地域に根差した食材、店主の専門性、手作りならではの味など、価格だけでは比較できない価値を明確にすることが重要になる。
物価高のなかで激安弁当が増えているのは、商品をシンプルにして価格を抑え、その価格を価値として新たな集客につなげ、他の商品も買ってもらうという、より大きな価格戦略の一部になっているからだ。
そして消費者は、すべての食事に同じ金額をかけるわけではない。安く済ませたいときには徹底的に節約し、価値を感じるものにはお金を払う。限られた財布の中で、何にお金を使い、何を削るのか。消費者は単純に安さだけを求めているわけではなく、価格と価値のバランスを重視するようになっている。
これからの弁当市場では、さらに安さを追求した激安弁当と、付加価値のある高価格帯の弁当の両方が求められていくだろう。


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