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ライフ #名著は知っている

人生そのものが小説の材料、小説は読者自身の人生を読むための「拡大鏡」 プルースト『失われた時を求めて』を読む(下)

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『失われた時を求めて 13 第七篇 見出された時Ⅱ』マルセル・プルースト 著
『失われた時を求めて 13 第七篇 見出された時Ⅱ』マルセル・プルースト 著、鈴木 道彦 訳/集英社文庫

紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、主人公は喜びに満たされ、田舎町コンブレーでの少年時代の記憶がよみがえる。本作序盤の有名な場面だ。

しかし、プルーストが描いたのは記憶だけではない。読み進めると、厄介な問いが現れる。──私たちは目の前の人を本当に見ているのだろうか。すなわち、人間の認知というテーマである。

ビジネスに効く名著のエッセンスを識者がコンパクトに解説する。【原則土曜日更新】

舞台は百年以上前のパリ社交界。若き主人公は作家志望だが何を書いてよいかわからない。憧れていた貴族のサロンに入り込むが、そこは虚飾と序列の世界だった。誰を晩餐会に招き、招かないか。肩書、評判、噂などを基に「あの人はこういう人だ」とのイメージが勝手につくられる。自分が言っていない言葉が、人から人へ伝わり、自分に戻ってくる。人間の他者認識は実にいいかげんだ。鋭い観察眼を持つ主人公は、権威ある貴族サロンの実態に幻滅する。だが、その評価体系から離れられない。

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