市場はすでにその兆しを示し始めている。電力関連、通信インフラ、データセンター建設など、AI本体とは異なる領域で業績の上方修正が増えている。 AI需要が伸びるほどインフラの逼迫が顕在化し、周辺領域の企業に追い風が吹く。これが「主役交代」の初期サインだ。
また、市場には金利・為替・地政学・需給という4つの主要リスクも存在する。アメリカの長期金利の高止まりは高PER(株価収益率)銘柄の調整を招き、AI関連の勢いを削ぐ可能性がある。
円高は輸出比率の高いAI・半導体企業の業績を押し下げ、海外投資家の日本株買いも細らせる。地政学の観点からは台湾情勢や米中対立が半導体供給網に直結し、最も警戒すべき単一障害点となる。さらに日本株は海外勢の売買比率が高く、先物主導の値動きやリバランスが短期的なボラティリティ(変動率)を高める。
こうした金利・為替・地政学・需給の4つのリスクは、AI相場の方向性を左右する一方で、金融株には別の形で作用する。とりわけ金利の上昇は、AI関連には逆風となる一方で、銀行株には収益拡大の追い風となる。この“逆方向の力”が、秋相場の「第2の軸」を形成する。
「金利上昇メリット株」はまだ上がる
2つ目のカギである「金利上昇メリット株」には、なお上昇余地が残る。ただし、PBR(株価純資産倍率)の再評価が進んだことで、ここからは“選別の局面”に入る。
上昇余地が残る根拠は、金利上昇によってNIMの拡大が続くからだ。NIM(エヌ・アイ・エム)とは、Net Interest Margin、純金利マージンのことを言う。これは、銀行などの金融機関が“どれだけ効率よく利ざやを稼いでいるかを示す最重要指標である。
銀行株の利ざや拡大は今後1〜2年続く見通しだ。その見通しの理由は、(1)流動性資産の運用収益改善で本業収益の増加が継続する構造(2)預金コストの上昇が資産よりも緩やかで、金利上昇の利益が銀行に残りやすい構造(3)企業の資金需要が増加し、貸出残高の増加が収益を押し上げる構造(4)信用コストが低水準で安定し、利益の下振れリスクが小さい構造、などによる。
もちろん、上昇余地が限定される理由も複数ある。PBRは上昇して割安感が薄くなった。例えば、現在、三菱UFJフィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループが1.7倍台、三井住友フィナンシャルグループが1.5倍台と、歴史的な再評価が進行した結果、こうした銘柄のPBR1倍割れ改善余地は消失した。
また、金利上昇メリットを織り込んだ結果、PERは3行とも14〜15倍となり、ここからの上昇は「利益成長の継続」が必須だ。さらに、預金獲得競争の激化は調達コストの上昇となり、上記のNIMの拡大が想定ほど進まない可能性もある。そして、10年国債利回りも3%台に乗せ、保有債券の評価損が増加している、などだ。
従って、日本の金融株(特にメガバンク)は「上昇余地はまだ残るが、上昇ペースは鈍化し“選別の局面”に移るかもしれない。前述のAI関連と同じような流れだが、金利正常化による収益押し上げが続く一方、割安感が薄れてきた。
ただ、やはり「高配当+金利上昇メリット株」の組み合わせは個人投資家の人気が高く、「AI関連の反動安局面では資金が逃げ込む場所」として機能している。
この2つの構造変化が秋相場の姿を決め、年末年始相場への道筋を形づくることになる。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)


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