こうした小説家の枠を越えた活動は、SNS上でも注目されがちだ。つい先日も、朝井さんの半生を振り返るような投稿が拡散されていた。それに加えてしばしば話題になるのが、書籍カバーの折り返し位置にある「著者紹介」だ。
通常の著者であれば、生年月日や受賞歴、代表作などの略歴のみで完結する。そのため「あまり読まれない項目」として扱われているのだが、朝井さんの著書では、略歴と共に「いよいよ若手ぶれなくなってきた事実に震える」「このスペースを死角と断定」(いずれも、『そして誰もゆとらなくなった』より)など、読まれないことを逆手に取ったような文面が記載されている。それがまるで「宝探し」のような評価を受けているのだ。
著者紹介に仕込まれた「フリ」と「ボケ」
さて、ここまで朝井リョウさんについて紹介してきたが、実は筆者、朝井さんの著作を『正欲』くらいしか読んだことがない。それでも、いや、だからこそ「インフルエンサー・朝井リョウ」の持つ魅力を、客観的に分析できるはずだ。
なぜ、一挙手一投足が“バズる”のか。その背景に、卓越した表現力があることは間違いない。もちろん珍しいオファーや出来事に遭遇する、いわば「引きの強さ」もあるだろう。しかし、起きた出来事をそのまま並べれば、誰でも同じように面白い話にできるわけではない。
加えて、そこには「ずらし」の美学がある。著者紹介を例に出せば、読み手は「無味乾燥な経歴のみが書かれているだろう」といった先入観がある。だから、そこに異質な言葉が混ざったときの落差が効くのだ。お笑いにフリがあって、ボケがあるのと同じ構造だ。
そしてそれらは、コンテンツとして極めて短く完結している。作品を読まなくても、なんなら小説家であることを知らなくても、単体で楽しめる。この間口の広さこそが、人気の土台なのだろう。


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