「社員投票で1位になった作品が、経営層に却下されたんです。簡単に言うと、職人たちが信用されていなかった。『原価関係なくいいものを作れば売れる』という考えでこれまで赤字を出し続けてきた彼らに、儲かる商品を作り出せるはずがないと。
経営層と職人の間には、価値観のズレがあったんです。売れる商品を作る前に、まずは『人の輪』を作らなければならないと気がつきました」
4年かけて赤字を解消
まず見直したのが、組織図だった。春華堂では、従業員の約4割を非正社員が占めている。ところが当時の組織図には、契約社員やパート、アルバイトが含まれていなかった。
「もし自分が契約社員で、組織図に自分の立場がなかったら、正社員との間に分厚い壁を感じてしまいます。そこで総務部へ行って、正社員も契約社員もパートもアルバイトも、みんな『春華堂メンバー』として組織図に入れてほしい、名刺も作ってほしいとかけ合いました」
同時に、人を育てる仕組みも整えていった。それまで社内には研修制度すらなかったため、クレド(行動指針)を策定し、研修や評価制度を整備した。
その一つが、うなぎパイ職人の技術を継承するための「師範制度」だ。職人を「師範、宗家、範士、錬士」の4段階に分け、毎年審査を実施。基準をクリアすれば、次の階級へと昇格できる。
「これは技術だけではなく、『心・技・体』を向上させるための評価制度です。上司だけでなく、同僚や部下からも360度評価を受け、認められることで階級が上がります。昇格すれば給料アップにもつながる。現場の職人として、技を極めていく目標になるんです」
こうした仕組みは、日々工場で生地を練り、うなぎパイを作り続ける職人たちに、新たな目標を与えた。


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