フィジカルAIを考えるうえでは、ソフトバンクグループの動きも興味深いです。
同社の投資や買収は派手に見えますが、本質は「モデルと現場をどうつなぐか」にあります。AIモデルだけを持っていても、社会実装はできません。逆にロボットやインフラだけを持っていても、頭脳がなければ高度化できません。この両方を結びつけようとしている点に、ソフトバンクグループの“らしさ”があります。
日本にとって大切なのは、米国企業と同じ土俵で基盤モデルの数や派手さを競うことではないでしょう。むしろ、日本の強みである通信、ロボット、製造業、現場データ、実装力を活かして、「AIを社会へ実装する速さ」で勝負することです。
実装が進めばデータが溜まり、人材が育ち、周辺企業の需要も増えます。日本を今からAI開発大国にすることは簡単ではありませんが、AI実装先進国にすることは十分に可能だと思います。
新川は半導体商社の経営者として、ここに大きな希望を感じます。日本は新しい技術そのものでは後れを取ることがあっても、現場へ落とし込む段階で底力を見せる国です。半導体装置や材料でもそうです。フィジカルAIでも、その構図が再現されることを期待しています。
テスラの覚醒――もう単なるEVメーカーではない
フィジカルAIを語るとき、やはりテスラは外せません。
同社をただのEVメーカーとして見るのは、もはや少し違うと思います。
テスラの本質は、車、工場、ロボット、半導体、ソフトウェア、データを一体で設計し、現実世界をAIで動かそうとしている企業だという点にあります。
ロボタクシーも、ヒューマノイドロボットの「Optimus」も、その延長線上にあります。
もちろん、ここには不確実性があります。量産は本当に進むのか、規制はどうなるのか、安全性は十分か。冷静に見なければいけない点はたくさんあります。足もとの事業だけを見れば、テスラは評価が難しい企業でもあります。
それでもなおテスラが面白いのは、「未来を先に見せる力」があるからです。
イーロン・マスクという人物は、単に製品を売っているのではありません。人が運転しなくてもよい世界、人がやりたくない危険で退屈な仕事をロボットが担う世界、その未来像そのものを資本市場へと提示しています。その「技術と物語を同時に動かす力」は、本当にすごいと思います。
桶井も投資家として、テスラは好き嫌いが分かれる銘柄だと感じます。しかし、無視してよい存在ではありません。
もし自動運転やヒューマノイドが本格的に実装段階へ入れば、テスラの企業価値の見え方も大きく変わる可能性があります。フィジカルAIという大きな流れの中で、テスラはやはり象徴的な企業なのです。
桶井はテスラにも投資していますし、イーロン・マスクCEOがつくろうとする未来も楽しみにしています。



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