第一印象は、可もなく不可もなし。そういうとき、さちこは「もう一度会ってみよう」と考えるようにしている。婚活を始める前に見たYouTubeや読んだ指南書に、「お見合いの短い時間だけでは、人柄はわからない。悪い印象がなければ、もう一度会ってみる」というアドバイスがあったからだ。
初対面で心が動かなくても、会ううちに相手の良さが見えてくるかもしれない。そう考え、まさのりに交際希望を出した。
初デートは、日曜日の正午だった。さちこは毎週日曜の午前中、ピラティスに通っており、それを終えて待ち合わせの店に行くことは、まさのりにも伝えていた。
待ち合わせ場所は、駅ビルのカフェ。予約ができない店舗だったため、先に着いたほうが席を取っておく約束だった。さちこは、一緒にランチを食べるものだと思っていた。もっとも「ランチをしましょう」と確認したわけではない。正午の待ち合わせから、そう受け取っていたのだ。
メニューをめくる手が止まった
先に到着したさちこは店員に「2名です」と告げ、席に着いた。メニューを開き、何を食べようかと考えていると、5分遅れてまさのりがやってきた。
「いや~、ごめんなさい。昼飯を食べた定食屋が混んでて」
さちこのメニューをめくる手が止まった。
昼飯を、食べた?
これから一緒に食べると思っていた相手は、すでに食後だった。
「あの、お昼は……」とさちこが聞くと、まさのりが言った。「近所の定食屋の焼肉定食10%の割引券が、今日まででね。使わないともったいないから」。初デートも今日だが、割引券も今日までだったようだ。
さちこは、少し戸惑った。午前中はピラティスに行くと伝えてあったし、待ち合わせは昼の12時。当然一緒にランチをするものだと思い込んでいたからだ。


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