「きよこさんは、どんなお仕事をされているんですか」。そんな気の利いた一言があれば、会話のボールは相手に渡る。ところが、くにおはボールを抱えたまま走り続けていた。
きよこは、自分の話すきっかけを待っていたが、次第にその気も失せていった。笑顔は消え、話の合間に無表情で相づちを打つだけになっていた。
笑顔がなくなった相手を見て、さすがにしゃべりすぎたと思ったのか、くにおは、ようやく質問に転じた。
「きよこさんは、どのくらい婚活をしているんですか?」「何人の男性に会いましたか?」「今、仮交際をしている人はいますか?」……。
説明会が終わったと思ったら、今度は婚活状況の聞き取り調査が始まった。
20分で「終わりにしませんか?」
くにおにすれば、相手を知ろうとしたのかもしれない。しかし、初対面の男性に、ほかの男性との関係まで報告する女性は、まずいないだろう。きよこは困りながら、それでもくにおに失礼がないよう、答えられる範囲で返した。
「婚活は春から始めましたが、そんなにたくさんの男性とは会っていません」
その瞬間、くにおの表情が変わった。そして、ムッとした顔で、こう言った。「もう、お見合い終わりにしませんか?」。
伝票をつかみ、立ち上がる。開始から、20分ぐらいしか経っていない。きよこも「この人とは合わない」と感じていた。ただ、これほど露骨に態度に出されるとは思わなかったので、嫌な気持ちになったし、何よりくにおの唐突な行動の意味が理解できなかった。
お見合い後、戸惑いながらきよこはこう話した。
「私も違うなと思っていたので、早く終わってよかったのですが、あまりにも大人気ない態度だったので、びっくりしました。交際はお断りでお願いします」
おそらく、くにお側からも交際辞退が届くだろう。それでも「20分で彼が急にお見合いを終わらせた理由は知っておきたい」と、きよこ。筆者はくにおの相談室にご縁がなかった旨を伝え、当日の様子を尋ねた。
すると、同じ20分間について、別の景色が返ってきた。


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