一方、珠は父を恐れながらも嫌ってはいない。酒とつまみを夜中に買いに行かされるが、言いつけどおりに間違えずに買って帰って褒められれば喜び、夜中に月明かりを浴びてカナリアを眺める父の姿を美しいと感じる。
学校の作文課題で父のことを書かなくてはいけないときに、当初はいいところがまったくない父の何を書くか悩むが、月夜の姿を見たときに心に浮かんだことをそのまま書き、類いまれな文才の片鱗を見せる。
その作文を父も喜び、近所に自慢する嬉しそうな姿もあった。
また、珠にとって、父に蔵に閉じ込められるお仕置きは苦痛ではなかった。むしろ蔵にある雑誌や小説を好きなだけ読める至福の時間になり、それが彼女の未来への学びになっていた。
1週目は、そんな珠と父・清治の奇妙な関係性を軸に、2人の間の目には見えないつながりが描かれた。
だから、自由奔放で放蕩無頼なモラハラ男の清治の人としての深みや心の底に抱える葛藤が気になってしまう。それが危うさを伴う妖しい色気になって表れているから、惹きつけられる視聴者が少なくないのだろう。
クズ父親こそ朝ドラの名物
振り返れば、クズ父親こそ朝ドラの名物であり、名作に欠かせないキャラクターにもなっている。
近年の代表は『おちょやん』(2020年後期)の竹井テルヲ(トータス松本)だろう。再婚相手の言いなりになって幼い娘を奉公に出し、自身は働かずに博打に明け暮れ、酒浸りになる。歳を重ねて借金を重ねた挙げ句、大人になった娘の貯金にたかる、紛れもない本物のクズであり、当時のSNSはテルヲ叩きが大いに盛り上がった。
ほかにも、夢を語るばかりで定職につかず、多額の借金を作って家族に苦労をかける『まれ』(2015年前期)の津村徹(大泉洋)や、酒癖が悪くてケンカばかりする借金まみれの頑固者の『スカーレット』(2019年後期)の川原常治(北村一輝)など、いずれのクズ父親も視聴者からの見事な嫌われっぷりが物語に華を添えていた。


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