*現在、全8回の本ロングインタビューの2回目と3回目について、無料の会員登録で全文をお読みいただけます。期間は2026/10/16 23:59までを予定しています。
1回目:『オリジン』誕生前夜、いつまでも「ガンダムの安彦」と言われるのはごめんだと思っていた
2回目:「単純な勧善懲悪じゃないからいい」、富野由悠季のガンダムが薄っぺらな話のわけがない(期間限定無料公開中)
3回目:クリエイターもファンの声に影響される 敵役が続編では味方になる訳、「Ζガンダム」への思い(期間限定無料公開中)
4回目:『オリジン』と『SEED』、2作品で盛り上がった「ガンダム20周年」を振り返る
5回目:アニメが興行的にこけると、スタッフは"しけた人間"という扱いになってしまう
6回目:才能のあり方の違い、「遊び精神がないのが、"彼ら"に俺が勝てない原因だと思っている」
7回目:世界は社会主義以前に戻った、でも今はトランプがきらいなら「きらいだ」と言える
8回目:シャアもその"餌食"になったが、かつて若者に広がった「やおい」は偉大な文化だった
人気が出ると怖いのは、キャラクターが絶対視されること
――第2回では漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(以下『オリジン』)に登場する、シャアの親世代についてうかがいました。偉大な父親がいて、その息子として生まれた、やはり偉大な人物を描いた物語としては『アレクサンドロス』もありますが、この作品を読むと、英雄的な人物を描くときに安彦さんは直球でただかっこよくはしないのだと感じます。アレクサンドロスの描かれ方には、屈折した部分、弱い部分が強調されている印象がありました。
それは曲解ではなく、そうだっただろうと確信がありますけどね。アレクサンドロスも割とうまく描けたなと思っていて、あの複雑な人間を240ページでまとめるという課題には無理があるんだけども、それにしては描けたなと。あれもマザコンにしちゃったんですよね。
――『オリジン』のシャアと重なるところがありました。
幼いんですよ。成熟した英雄ではなくてね、幼さを引きずってる。シャアもそうだと思うんですよね。人気が出ると怖いのは、キャラクターが絶対視されて、完璧だとかね、憧れだというふうになっちゃうんだけども、それには危うさがある。
――絶対視や全肯定に歯止めをかけるような描き方をされているということでしょうか。
人間ってそんな絶対的な存在じゃないよという気が僕はしてますんで。完璧で偉大な人間なんてたぶんいないよって。歴史をずっと見てもいない。もしいたら、それはほぼ人間じゃねえし、という考えですね。
シャアはなぜアムロに勝てなかったのか
――だから安彦さんの作品には、かっこいいだけの人が出てこない。
自分はどうしてもそうなっちゃうんですけども、ガンダムの場合はオリジナルのストーリーラインがそうなっているんですよね。象徴的なのが、アムロという主人公。これが基本的にはあんまりかっこよくない。
性格もハツラツとしていない。身体能力も、ケンカすると普通の兵士に負けたりね。友達もあんまり多くない。そういう画期的な設定なんですよ。力足らずの主人公が最終的にはチャンバラで、スーパーマンのシャアに勝つ。この(チャンバラの)場面は『オリジン』でも原作より厚めに描きました。過去を思い出すシーンがあったり。
――シャアとアムロは、無重力の不安定な空間で剣を持って戦います。
シャアは、「最後は力勝負だ」というふうに言うんです。これなら負けないと。相手のアムロはヘタレなやつですから。だからアンフェアなぐらいの力勝負の戦い、肉弾戦に持ち込んだけど、それでも相打ちになっちゃうんですよね。この場合の相打ちは、要はシャアが負けたってことです。じゃあ、なんで負けたのか。
それって象徴的じゃねえかという気がしてるんですよ。このラストは誰も変えられないオーラスなんですけども、なぜそこでアムロが勝っちゃうのか。それは、完全無欠にも見えるスーパーな敵役が、実はスーパーじゃないということの証明なんです。
1回目:『オリジン』誕生前夜、いつまでも「ガンダムの安彦」と言われるのはごめんだと思っていた
2回目:「単純な勧善懲悪じゃないからいい」、富野由悠季のガンダムが薄っぺらな話のわけがない(期間限定無料公開中)
3回目:クリエイターもファンの声に影響される 敵役が続編では味方になる訳、「Ζガンダム」への思い(期間限定無料公開中)
4回目:『オリジン』と『SEED』、2作品で盛り上がった「ガンダム20周年」を振り返る
5回目:アニメが興行的にこけると、スタッフは"しけた人間"という扱いになってしまう
6回目:才能のあり方の違い、「遊び精神がないのが、"彼ら"に俺が勝てない原因だと思っている」
7回目:世界は社会主義以前に戻った、でも今はトランプがきらいなら「きらいだ」と言える
8回目:シャアもその"餌食"になったが、かつて若者に広がった「やおい」は偉大な文化だった

