「過去の残高確認手続きにおいては、当時の担当役員および営業担当者が、経理担当部門への照会や帳簿精査を行わないまま、AC(アドバンスクリエイト)社からの要請に応じ、同社の意向を汲んで実態と適合しない内容に対し『相違ありません』等の回答をしていた」
これは不正会計問題が発覚した保険代理店アドバンスクリエイト(以下、アドクリ)の筆頭株主であるライフネット生命保険が、東洋経済の質問状に寄せた回答の一部だ。
調査報告書の「J社」はライフネット生命
アドクリの不正会計を調査した第三者委員会の報告書では、「J社」として登場しているライフネット。「監査法人に『差異なし』と回答をするように」という内容のメールが、アドクリ側からライフネットに送られていたことが、第三者委の調査で判明している。
残高確認とは、広告取引におけるアドクリ側の売掛金と、広告主である保険会社側の買掛金の残高に、差異がないかを確かめる監査上の手続きを指す。
アドクリ側は2018年以降、広告による売り上げを、広告を掲載する「前」に計上する、という不正な会計処理を行っていた。本来、広告の売り上げは、広告を掲載した「後」に計上しなければならない。
こうした不正を行うと、アドクリ側の売掛金と保険会社側の買掛金の間に、差異が生じる可能性がある。そのためアドクリ側は、取引額の大きい生保に対し、監査法人から残高確認があったときは「差異なし」などと回答するように要求。ライフネットなど一部の生保は要求をそのまま飲んで、事実と異なる回答を監査法人にしていたわけだ。
業績拡大を装うために広告の売り上げを前倒しで計上したいアドクリ側と、あの手この手で恩を売ってアドクリが運営するサイト「保険市場」で自社商品の優先的なPRにつなげたいライフネット。両社の思惑が重なり合うことで、アドクリ側の偽装工作に、ライフネットが積極的に応じていたことが、報告書と質問状への回答からうかがえる。
さらに23年4月、監査法人が実施した保険会社に対する一斉調査に対しても、ライフネットはアドクリ側と事前に口裏を合わせ、広告掲載が完了している分の代金支払いであるかのように装っていた。その事実について東洋経済が質問状で尋ねると、ライフネットは「AC社の意向に沿う形で、当時の担当役員が同社側から提示された文案等に基づき回答していた。このような取引先の意向を優先した対応は、監査の実効性を損なう重大な問題であり、厳粛に受け止めている」と回答した。
そうした不正会計の隠蔽に加担するような行為に至った理由についても尋ねると、「当時の担当役員は、重要な取引先との関係維持を優先し、相手方の意向に沿う形で安易に対応を行っていた。不適切会計に利用され得るという見識およびコンプライアンス意識の欠如が原因であった」という。
ここで言う「当時の担当役員」は複数いるが、そのうちの1人は25年にライフネットを離れ、26年4月に第一ライフグループの傘下生保の社長に就いた人物だ。

