1.ムンク《叫び》:うねる背景と友人の「軸線」が明かす精神世界
まず検証するのは、エドヴァルド・ムンクによる有名な作品《叫び》(1893年)です。
この作品について、ムンク自身は日記に次のような言葉を残しています。
つまりこの絵は、ムンク自身が「自然の叫び」=自分の中に湧き上がる畏怖と不安の感情に身震いしている瞬間を描いたものです。
この前提を踏まえたうえで、絵の造形に注目してみましょう。
主役の「S字の軸線」と奥の友人の「まっすぐな軸線」
絵の主役は、画面中央で体をS字にねじらせ、骸骨のような表情で両耳を押さえて立ちつくす人物(ムンク本人)です。
彼の体の「軸線」に注目すると、縦でも横でもなく、大きく波打つ「S字(曲線)」を描いていることがわかります。軸線にS字を用いることで、主役に「動き」や「心の揺らぎ」が付与されているのです。
一方で、橋の手すり(視線を奥へ導く「ディレクション」の役割を果たしています)を辿った先にいる「二人の友人」の軸線を見てみてください。彼らの軸線は歪むことなく、まっすぐ力強く立っています。
自然の叫びは、現実には音として聞こえているわけではなく、ムンクだけに訪れた主観的な精神体験です。だからこそ、叫び(恐怖)を感じて心が大きく動揺しているムンクの体は「S字の曲線」で歪められ、自然の叫びに気づかず平静なまま歩み去る友人二人は「まっすぐな縦の軸線」で表現され、対比されているのです。


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