その問いかけに開発陣がまず応えたのが「センチュリーGRMN」だった。ショーファーカーの静寂にドライバーズカーの熱情をプラス、つまり豊田章男ではなくモリゾウに向けた提案だった。しかし、章男氏はこれでよしとしなかった。
「本当に現代のリーダーが乗りたいと思える、新しいセンチュリーとは何なのか」
そこで自らの手でセンチュリーの命を未来へつなぐ覚悟を決めた。それが新たなボディタイプのセンチュリーだった。トヨタの公式的にはセダンが「センチュリー・セダン」、このモデルが「センチュリー」と名乗るが、ここでは便宜上シン・センチュリーと呼ぶ。
SUVのようなセンチュリーが誕生したワケ
「センチュリーで挑戦する人なんて、誰もいない。最初は僕だって『このクルマは挑戦できない』と思っていました」
そんな章男氏の背中を押したのは、クラウンの維新、「カローラ」のリブランディング、「ランクル250」の原点回帰と、自らが主導してきた「トヨタの改革」の歴史そのものだった。どれほど歴史ある看板であっても、守りに入った瞬間に息絶える。
「生まれ変わることでしか、歴史は紡げない」
開発陣が集結し、行動を起こした。パッと見ると流行りのSUVに見えるかもしれないが、開発陣が目指したのは「後席のお客様の新しいニーズを突き詰めた、現代の最高峰ショーファーカー」であった。
開発は初代以上に「未踏への挑戦」だった。1つ目は高級車の定番となる「縦置きFR」をあえて捨て、横置きレイアウト(GA-Kベース専用骨格)を採用したこと。
縦置きではエンジンが室内を圧迫し、運転手が後退して貴重な後席スペースを奪う。そこですべてを後席最優先で設計し、全長の制約の中で53度まで深く倒れ込むフルリクライニングシートを実現させた。
2つ目は静寂を担保する「キャビンセパレーション」だ。一見2BOXに見えるが、客室とラゲッジの間に分厚い隔壁を打ち込み、巨大なVブレースで補強。最新のセダンをも凌駕するねじり剛性と圧倒的な静寂を手に入れた「5ドアのセダン構造」だ。


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