そこで聞いた感想を参考にして、次の年にベルギーに戻り、少しだけレシピを改良した。
「次に飲んでもらった時には、みんなが『おお、おいしい』って。嬉しかった」
これを機にマイケルさんは「蒸溜所を造ってみたい」と強い気持ちを持った、わけではなかった。
周りに背中を押されて蒸溜所を開業
「そこから、何で蒸溜所を造ることにしたんですか?」
著者の素朴な疑問に、マイケルさんは困った表情をして「みんな聞くんだけど、わからない。It's just really an accident.」と答えた。一体どういうことなのだろう。これにボブさんが答える。
「マイケルは、『蒸溜所をやりたい』という強い信念があったわけではなくて。ジン造りを始める時もベルギーに行く時も、『ちょっとやってみようかな』っていう軽い気持ちだったんですね。ところが、マイケルがベルギーでプロトタイプとして造ったジンを僕が飲んだ時に、『あ、これ、おいしいじゃん』って思ったんです。
僕はずっとウイスキーに関わってきたし、その頃はクラフトビールも造っていたけれど、正直ジンは好きじゃなかったんですよ。クリスマスツリーをそのまま食べているような味がするなと思っていて。でも、このジンはいけるんじゃないかなと」
その後、さまざまな知り合いに試飲してもらうと、みな高評価。特に印象的だったのは渋谷にあるカクテルの名店「石の華」のマスターの言葉だった。もともとボブさんとマスターは友達だったため、率直な意見を聞くために、作り手のマイケルさんがボブさんの友達であるということを隠して感想を聞いた。
すると、「国内でこれが造れるなら、ぜひほしい」。その後も、マスターからは何度も「いつできるんですか?」と聞かれた。やっぱりこのジンには需要がある、とボブさんは確信したという。
2019年頃、周囲から背中を押されるように、ついにマイケルさんとボブさんは動き出した。本格的に蒸溜所を造ろうと決めたのだ。すると、サポートを申し出てくれる人が次々と現れた。たとえば、マイケルさんの妻、明子さんの同級生が建築会社の社長をしており、建物の設計と建築を担ってくれた。
マイケルさんの友人の伝手で、蒸溜器のフルオーダーができる海外の業者が見つかり、別の友人はボトルのデザインに手を挙げてくれた。さらに、ボブさんの友人が資金を援助してくれることになった。


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