東大の入試問題には、美しいものがたくさんあります。僕がとくに好きなのが、1982年の東大英語・第1問の要約問題です。問題文は、次の一文から始まります。
まず、「One lesson that life teaches as we grow older」が主語です。「私たちが歳を取るにつれて人生が教えてくれる1つの教訓」という意味ですね。それが「is that〜」、つまり「〜ということだ」と続きます。
そして that の後ろで、2つのことが並べられています。
- 「are not to be taken too seriously」(そこまで深刻に受け止めるべきものではない)
内容もとても面白いですよね。歳を重ねると、怖がっていたことも期待していたことも、実はそれほど大したものではなかったと気づく。人生の真理を突いた、味わい深い一文だと思います。
ただ、僕がそれ以上に惹かれるのは、この文の並び方です。この文には and が2回出てきます。1つめは「both our fears and our hopes」で、「恐怖」と「希望」という正反対のものを並べています。2つめは「are mostly illusions and are not to be taken too seriously」で、2つの述語を並べています。
and が2つもあると、普通なら文はごちゃごちゃして読みにくくなるはずです。ところがこの文は、驚くほどわかりやすい。主語、恐怖と希望の対比、2つの述語。それぞれがあるべき場所にぴたりと収まっていて、読み終えたときに「きれいだな」と感じます。構造がきれいだからこそ、意味がすっと頭に入ってくるのです。
こういう文を「難しい」と感じるか「美しい」と感じて楽しめるかは、実はかなり大事なポイントだと思います。
「美しい」と感じる人は、なぜ伸びるのか
美しさを感じられる人は、なぜ成績が伸びやすいのでしょうか。僕は、理由が2つあると考えています。
1つめは、美しさに気づくためには、構造が見えていなければならないということです。先ほどの英文をきれいだと感じるには、どの語とどの語が and で結ばれているのか、主語はどこまでで述語はどこからなのかがわかっていないといけません。つまり「美しい」という感覚は、深く理解できていることの証拠でもあるのです。逆に言えば、美しさを探そうとして読むと、自然と文の構造に目が向くようになります。


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