代わりに強調したのは、発展途上国・地域に対して6700億ドルを超える支援を行い、99カ国に6万人規模の国際協力機構(JICA)海外協力隊を送り込んだ「実績」だった。
また、GX(グリーントランスフォーメーション)をエネルギー需給構造の強靭化によって一層強化させるとともに、脱炭素化とエネルギー安全保障、経済成長を同時に進めるアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じて、気候変動に貢献することを宣言。さらに、AI(人工知能)をめぐるルール作成の国際的枠組みである「広島AIプロセス」を進め、AIサミットの早期実現も提唱した。
現在の国際的課題を網羅的に述べる一方で、高市首相は「一歩を踏み出す」ことも忘れなかった。国連憲章の「旧敵国条項の削除」を提唱したのだ。
「旧敵国条項」とは、第2次世界大戦で連合国と戦った日本、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7カ国が再度侵略行為を行った場合、安保理常任理事国の許可を受けずに迅速に対処できると定めた条項を指す。
1995年の国連総会決議で「時代遅れ」として事実上死文化したものとされ、2005年には条文を削除する“決意”を示した国連総会決議が採択された。だが、国連憲章を改正するには、全加盟国の3分の2以上の賛成と批准、そしてすべての安保理常任理事国の同意が必要とされるなど、手続きのハードルは高く、いまだ「旧敵国条項」は削除されずにいる。
「81年を経た国連憲章も見直されなければなりません。『旧敵国条項』について、2005年には全加盟国首脳の決意として国連憲章から『敵国』への言及を削除するとの国連総会決議が採択されています。この決議に従い、同条項は早急に削除されるべきです。70年間に渡り国連の取り組みに大きく貢献してきた日本の誇りと名誉にかけて、強く申し上げておきます」
高市首相が「旧敵国条項」で踏み込んだワケ
このように高市首相が高らかに宣言した背景には、中国への強い対抗心がうかがえる。
中国は05年に「旧敵国条項」の削除に同意したが、昨年11月の「台湾有事発言」をきっかけに態度を硬化。駐日中国大使館は11月21日、Xに「『国際連合憲章』には『敵国条項』が設けられており、ドイツ・イタリア・日本などのファシズム/軍国主義国家が再び侵略政策に向けたいかなる行動を取った場合でも、中・仏・ソ・英・米など国連創設国は、安全保障理事会の許可を要することなく、直接軍事行動を取る権利を有すると規定している」と投稿した。
こうした経緯を見れば、「旧敵国条項の削除」を持ち出せば、中国を刺激するのは明らかだった。


※ログイン後、コメント入力が可能です。