さらに、このような対応は現場で働くスタッフにも暗にメッセージを送ることになる。権力を持つ人物との間で問題が起き、実際にけがをしたとしても、会社がそれを内部処理し、その人物がすぐに制作現場に戻ってくるのであれば、「声を上げても結局何も変わらない」と失望する人が出てきても不思議ではない。この件についてTBSが今後も一切の説明や処分をしないのなら、ハラスメントが蔓延するような状況を放置していることになる。
福澤氏個人だけの問題ではない
本来であれば、福澤氏が優れたドラマ制作者であることと、今回報じられた問題とは切り離して考えるべきである。そして同時に、福澤氏個人だけを責めれば済む問題でもない。大きな権限を持つヒットメーカーを組織がどのように管理し、問題が起きたときにどのように処分し、どこまで社会に説明するのか。ここで問われているのはTBSという組織そのものの姿勢である。
報道機関が社会から信頼されるために必要なのは、他者の不祥事を厳しく報じることだけではない。自分たちにとって不都合な事実にも同じ基準を適用することである。もし他社で同じことが起きていたならTBSはどう報じただろうか。自社だけを特別扱いするというのなら、報道機関としての信頼は根底から揺らぐ。
「良い作品を作る」という目的も、ヒットメーカーを守るという経営判断も、現場で働く人間の安全や尊厳より上位に置かれてはならない。
そして報道機関である以上、自社に都合の悪い事実だからといって、それを曖昧な言葉で包み、社会の目から遠ざけることも許されない。TBSが問われているのは、自ら掲げる報道機関としての倫理を自社にも厳格に適用できるのかということなのだ。


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