「幸福への強迫観念(プレッシャー)」が現代人にとっての新たなストレスとなり得るわけですが、私たちはそこから抜け出さなければなりません(これは本書でも触れている内容の一部です)。
複雑な問題に立ち向かう原動力
本書の重要なポイントは、幸福を個人的・文化的にどう定義しようとも、ホモ・サピエンスは快楽や楽しさを追求するように設計された「生物学的機械」であるということです。
幸福そのものに特別な精神的価値があるからではなく、生存や再生産(繁殖)に関わる数々の複雑な課題(資源、地位、友人、恋人の獲得など)を成し遂げるためには、その目標に向かう意欲と動機づけが必要となります。
このとき、脳が用いる最高のご褒美こそが「快感」なのです。
つまり、古代ギリシャの時代から幸福は人生の究極の目的であるとみなされてきましたが、それは科学的な分析ではなく「人文学的なストーリー」にすぎないといえます。この長年の視点にとらわれていては、幸福とは目的ではなく「生存のための精神的ツール」であるという本質を見抜くことはできません。
だからこそ、どれほど生活が豊かになっても、幸福は足踏みを続けているかのような空回り感を覚えるのです。目の前の目標(昼食)を達成すると、脳は次の目標(夕食)へと関心を向けさせるために、感情(快)を元の状態へとリセットしてしまうからです。


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