とはいえ、少なくとも「高3から問題集を何周すれば合格できるか」というタイプの入試ではありません。
関心のある問題を見つけ、調べ、誰かと関わりながら実際に動く。その過程を記録し、自分が考えたことを言葉にする。さらに、それを英語でも説明できるようにする。
必要なのは、短期的な「実績作り」ではなく、日常の学び方そのものです。
なお、価値創造学部に出願すると、2027年4月入学の東大一般選抜、学校推薦型選抜、外国学校卒業学生特別選考とは併願できません。受験生は「従来の東大を目指すのか、価値創造学部を選ぶのか」を、共通テスト前に決めることになります。
ただし、東大以外の国公立大学、私立大学、海外大学との併願を価値創造学部側が禁止しているわけではありません。最終合格発表は2月20日で、海外大学も視野に入れる受験生が進路を比較しやすい日程になっています。
日本の高校を3月に卒業する場合、入学までには約半年あります。東大はこの期間を「Gap Term」と呼び、希望者にオンラインで教員との対話や英語学習などの入学前支援を行う予定です。
出願から入学まで、日本の標準的な大学受験とはまったく異なる時間軸で設計された入試なのです。
「解ける人」から、「語れて、動けて、巻き込める人」へ
価値創造学部の入試から見えてくるのは、「学力の否定」ではありません。
共通テストで幅広い基礎学力を示す。そのうえで、自分の関心を言葉にし、英語で伝え、実際の行動によって裏づけ、他者と協働できることまでを示す。
言い換えれば、「問題を解ける人」だけでなく、「問題を見つけ、語り、動き、周囲を巻き込みながら形にできる人」を選ぼうとしているのです。
この入試が成功するかどうかは、まだわかりません。どの程度公平な選抜になるのか、ビデオやエッセイをどう評価するのか、対策の過熱を防げるのか。実際に始まってみなければ見えない課題も多くあります。
それでも、日本で最も影響力のある入試を持つ大学が、個別筆記試験を行わず、英語のビデオ課題まで使って100人を選ぶ意味は小さくありません。
一般選抜を目指す受験生にとっても無関係ではありません。
従来の一般選抜枠は102人減ります。そして東大自身、新学部で生まれた新しい教育方法や学びのモデルを、大学全体へ波及させることを目指しています。
将来、その考え方が既存学部の教育や選抜に影響しても不思議ではありません。
入試は、大学から受験生へのメッセージです。
2027年、東大は「何点取ったか」だけではなく、「あなたは何を考え、何をしてきたのか。それを自分の言葉で語れるか」と問い始めます。
その変化を最も象徴しているのが、出願画面の向こうで受験生を待つ、あのビデオカメラなのかもしれません。


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