現地に派遣されている日本の鉄道関係者からは八方塞がりと声が出るほどに、状況は悪化している。日印両政府の板挟みになっている実務者らの苦労は計り知れないものがある。10年以上もの間、多大なリソースをインド案件に割いていながら、前提条件が覆されてしまったのだ。
日本仕様から欧州仕様に変えるということは、全ての設計やり直しを意味する。コンサルタントが作成した仕様書や図面など、入札図書諸々も無用の長物となってしまうだろう。インド側がこれらを不要として受け取りを拒否すれば、かかった費用を日本側が泣き寝入りせざるを得ない可能性すらある。あるインド駐在経験者は、「新幹線は筋が悪い案件として、誰も積極的に関わろうとしていないように感じる」と言う。
インドネシアの高速鉄道案件では、技術協力として実施される F/Sと本体着工には連続性がないことから、本体着工は中国となった。F/Sの成果物として提出された報告書は相手国の所有となり、ルール上、それを第三国に開示しても問題はない。本体着工前に引き揚げることのできたインドネシア案件は、日本にとってはある意味ではよかったともいえる。一方、インド案件は着工したがために、より根の深い問題を抱えることになった。
輸出目指すなら「規格統一」を
ムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道は、当初、東北新幹線E5系タイプの車両導入を計画した。その後、開業時期の遅れから新型のE10系に変更されているが、それはシステムもJR東日本の新幹線と同じものを使うことを意味する。
先ほど、超ガラパゴスと表現したわけはここにある。現状の新幹線はJR各社で異なる技術であり、日本国内ですらバラバラの状態といえる。もし「新幹線輸出」を目指すなら、まずはこの枠組みを取り払わなければならない。
海外の国々は、高速鉄道を一つのネットワークとして考えている。日本国内の新幹線のように別々の路線ではない。場合によっては、在来線への乗り入れや貨物列車を走らせることも想定している。特に大陸国の場合、中国や欧州各国との乗り入れが前提になりやすいため、規格の統一は必須である。その点がクリアされなければ、どんなに新幹線の品質が優れていても、選択肢には上らないだろう。
まずは、輸出向けモデルの決定版というべきモジュールを業界を挙げて策定し、海外メーカーとも協業できる部分は協業していかなければ、新幹線輸出の未来はないのではないか。

