大空高校の横山先生は「まるで転校生のような体験ですよね。知らない学校・知らない生徒・知らない同僚の先生方のなかで不安がないといえば嘘になりますが、楽しみな気持ちが100%です」と言う。そんな横山先生の姿勢を見て、「先生自身が越境して学ぶ背中を見せることは、生徒にとって何よりも納得感があるはず」と大辻校長は語る。
他校での学び「絶対に行きたい」と手を上げた生徒が目指すのは
今回の取り組みでは、各校の生徒も他校で1週間を過ごす。本プログラムへの参加希望者は3校合計で35人。高い倍率のなか、飯野高校に派遣されることになった大空高校の上林葵さんは「絶対に行きたい!」という思いを込めて、エントリーシートを書いたという。
「飯野高校の探究学習は課題を見つけて、その解決策を考えて、さらに地域で実践するところまで落とし込んでいると思います。私は大空町で生まれ育ち、この地域が少しでもよくなるために探究を実践にまでつなげたいとずっと思ってきました」
大空高校の探究の合言葉は、「社会を1ミリ前に動かす」だ。その1ミリを求め、生徒たちはアクションを重ねる。
「大空町には小中学生が放課後学習できるスペースがなく、この課題を解決するために先輩たちが学習スペースを作ったんです。高校生が地域のなかでそこまで実現できるのだと知り、探究をもっと頑張ってみたくなりました」
高校に入り、上林さんには大きな変化があった。
「中学生の頃はすごく心配性で、いつもの安心できる場所に留まっていたいと思うタイプでした。大空高校は4割程度が地域みらい留学生として、他のエリアから入学してきています。そうした友達と過ごす中で、私もいろいろなところに行って、吸収したいという気持ちが高まっていきました」
地域みらい留学は、中学時代を過ごした都道府県から飛び出し、日本各地の公立高校で3年間を過ごす国内留学プログラムだ。
また越境人材が集い、育まれている大空高校では、海外短期留学補助として町が年間4名まで40万円を補助しています。昨年度は、町の補助や文部科学省が展開する「トビタテ!留学JAPAN」の制度などを利用して、昨年度の在籍生100名のうち、18名が23カ国に渡航した。
学校がスローガンで示す「飛行機人(ひこうきびと)」には、空港のある町で、自ら空に飛び上がる力を持つ人を育みたいという思いが込められている。
上林さんの背中を押すのは先生の言葉だ。
「大空高校の先生たちは、私が失敗したらどうしようと迷っていると『今のうちに失敗したほうがいい』と言ってくれます。この言葉を聞くと落ち着いて、新しい体験に踏み出すことができます」
生徒の背中を押す先生や学校自体もチャレンジをし続ける。大辻校長はこの「3校循環型滞在研修」はまだまだ挑戦の余地があると語る。
「“1週間ではなく1年間の滞在型研修にしてはどうか”や、価値観を同じくする新たな学校を加えて『4校循環型滞在研修』なども実現するかもしれません。生徒に探究と越境の大切さを伝えているならば、教員自身も探究と越境を繰り返していく必要がある。『3校循環型滞在研修』はそんな挑戦の1つなのです」


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