そして、小学校教師である私には、もう1つ考えずにはいられないことがあった。こうした大人の働き方と、子どもたちが学校で経験していることは、本当に別々なのだろうか。
今回オランダの教育に触れて、繰り返し感じたのは、「あなたはどうしたいのか」を子どもに問う姿勢だった。
「あなたはどうしたい?」「では、どうする?」――。問題が起これば、当事者同士で話し合う。幼児教育の段階からそうした考え方に触れ、小学校でも、子ども同士で話し合うことが特別な活動ではなく、日常の中に組み込まれているように私は感じた。
これは、今回聞いた大人たちの働き方ともどこか重なる。自分はどう働きたいのかを表明し、相手の事情を聞き、話し合いながら調整する。もちろん、「子どもの頃からこういう教育を受けているから、大人になってこう働く」と単純な因果関係は言えない。
それでも両者がまったく無関係だとは、私には思えなかった。自分で選ぶ。自分の考えを伝える。相手の考えを聞く。違いがあれば話し合う。そして、互いに折り合えるところを探す。
「選べる」ことと「話し合う」ことはセットなのである。私自身、日本の教室でも子ども同士の対話やクラスでの話し合いを大切にしてきた。今回の視察を通して、それは単に「仲のよい学級をつくるため」の活動ではないのだと改めて感じた。
将来、「私はどうしたいのか」と考え、それを他者に伝え、違う希望を持つ人と話し合いながら社会をつくる。そのための練習を、子どもたちは今、教室でしているのかもしれない。
日本が真似すべきなのは「週3〜4日」ではない
学校では、何かを減らそうとすると不安が生まれる。会議を減らして大丈夫か。校務を減らして大丈夫か。教育内容を減らして大丈夫か。私たちは、「減らすことで失うもの」には敏感である。
しかし、「減らさないことで失っているもの」には案外気づきにくい。教材研究の時間。子どもについてじっくり考える余白。教師自身が学ぶ時間。そして、教師が働き続ける力。何かを残すという選択にも、コストはあるのである。
オランダで「週3〜4日程度働く教師も珍しくない」と聞いた時、私は「そんな働き方で、学校が回るのだろうか」と思った。しかし帰国後、制度まで調べてみて、問いが逆だったのではないかと思うようになった。
「週5日働かない教師がいても、どうやって学校を回すか」ではない。「それぞれが働ける時間の中で、どういう学校なら回せるのか」。こちらを先に考えるのである。
日本がオランダから学ぶべきなのは、「週3〜4日」という数字そのものではないと思う。人を仕事に合わせ続けるのではなく、人が働ける時間の中に仕事を収められるかを考えること。誰かが無理をしなければ回らない学校を、最初からつくらないこと。そして、そのために必要な「選ぶこと」と「話し合うこと」を、子どもの頃から経験していくこと。
現地で聞いた「週3〜4日勤務」という働き方を追いかけていった先で、私がたどり着いたのは、結局そんな教育の話だった。
(参考文献)
秋山開『18時に帰る――「世界一子どもが幸せな国」オランダの家族から学ぶ幸せになる働き方』(プレジデント社)


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