だからこそ、購入できたのは「本当にMVアグスタが欲しい」という一部のユーザーに限られた。
そもそもの流通台数が少なく、しかも高価だった。そのうえ、半世紀以上の時間を経ても正規輸入車としての履歴が確認でき、純正パーツを保ったまま良好な状態で残っている──。
そう考えると、2600万円という価格は、単純に「古いバイクだから高い」という話ではないことがわかる。
現在も受け継がれるMVアグスタのブランド
歴史を振り返れば、MVアグスタは一度、二輪車事業そのものを停止したブランドである。しかし、その名声が失われることはなかった。
92年に同じイタリアの2輪車メーカー、カジバが休眠状態だったMVアグスタの商標を取得。その後、08年にはアメリカの2輪車メーカー、ハーレーダビッドソンに買収されるなど、幾度かの経営体制の変化を経ながら、ブランドは現在まで受け継がれている。
いずれにしても、半世紀以上前に生まれた750スポーツと750Sアメリカが、今なお1000万円単位で取引される背景には、MVアグスタというブランドが持つ長い歴史と物語がある。
今回の750スポーツに付けられた2600万円という価格も、単純に「古いバイクだから高い」という話ではない。
当時から高価だったこと、世界的に名を知られたレーシングブランドであること、そして日本における正規輸入車としての履歴や、半世紀以上にわたって保たれたオリジナル状態。こうした条件が重なった結果が2600万円という価格なのである。
一方、750Sアメリカも約540台しか生産されなかったとされる希少車だ。それでも、正規輸入車かどうか、純正パーツをどこまで残しているかといった車両の「履歴」や「素性」が、ビンテージバイクの世界では大きな価値を持つ。
希少性だけでは決まらない──。今回の2台は、ビンテージバイクの価格が、車種そのものだけでなく、半世紀にわたる「一台の履歴」によっても大きく変わることを教えてくれる存在といえそうだ。


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