Oさん夫妻は、結婚してすぐに、以前から飼いたかった猫を2匹迎えました。当時住んでいた都心の1LDKの賃貸マンションは、窓の外は隣のマンションの壁で日当たりもあまり良くなく、日中も少し暗かったのです。猫たちが小さいうちは良くても、成長するにつれ、2匹の喧嘩は増えていきました。猫たち2匹だけで過ごす時間が長い、居場所が少ない、運動量が足りない、外の景色を楽しめないことなどが少しずつ猫たちのストレスになっていたことに、あとから気づきました。
「人間は外に遊びに行けますが、猫は家の中がすべてです。猫の一生は人間に比べて短いのに、私たちは共働きでお留守番の時間が長い。だからこそ、家の中でのびのびと過ごせる環境をつくってあげたかったんです」。この妻の言葉が、この家づくりの出発点でした。2023年秋、1LDKで2人と2匹で暮らすことに限界を感じたふたりは、「猫たちがストレスなく暮らせる家を建てよう」と決意しました。
“本気の猫が喜ぶ家”を建ててくれる設計士に依頼
猫のための家を本気で理解して建ててくれる人がいるのだろうか……。Oさん夫妻は、そんな不安を感じながら建築会社や設計士に相談しましたが、提案されたのは「人間がメインで、猫用の設備を部分的に足した住まい」ばかり。ふたりが求めていた、一から猫の動線ややりたいことに添った“猫が主役の家”とは、違うと感じました。
そんなとき、夫が思い出したのが、20代前半から大切に持っていた一冊の本でした。 猫と暮らすための家づくりを紹介したその本の著者は、「ファウナ・プラス・デザイン 一級建築事務所」の建築士、廣瀬慶二(ひろせ・けいじ)さん。自身も猫と犬と暮らす自宅を建てており、動物の行動学をもとに猫や犬と快適に暮らす家づくりを多数手がける、数少ない建築士のひとりです。
「とにかく猫が飽きずに過ごせる家をつくってほしい!」。そんな要望を喜んで受けてくれた廣瀬さんに建築を依頼することを決めたのが2023年12月。猫2匹の性格、これから新たに猫2匹を迎える予定があることや、夫妻のざっくりした要望などを伝え、2024年1月には土地(約30坪、800万円)が決まりました。

